ライフ

「報道の自由度」はG7で最下位の日本、「世間話の自由度」はどうか

何でもコロナのせいにする社員に四苦八苦…(イメージ)

わたしたちは自由にものが言えているか(イメージ)

 何かと不自由さを感じてしまう今日この頃。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
 どうひいき目に見ても、今の日本で「ジャーナリズム」が健全に機能しているとは言えません。5月3日に国際NGO「国境なき記者団」が発表した2023年の「報道の自由度ランキング」でも、日本は調査対象の180カ国・地域のうち68位(昨年71)。主要7カ国(G7)の中で、定位置である最下位をキープしました。

 困った問題ですが、日本で自由度が低いのは、はたして「報道」だけでしょうか。メディアはメディアでがんばってもらうとして、自由度の低さに甘んじている状況は、けっして他人ごとではありません。私たちの「日常生活の自由度」は、胸を張れるものなのか。たとえば「世間話の自由度」はどうなのか。

 あいにく、そういう調査を行なっている国際NGOはありません。他国との比較は難しいとしても、己を冷静に省みたいところ。「十分に自由だけどね」と感じている方も、茹でガエルの如く徐々に「不自由」に慣らされているだけかもしれません。

「日常生活の自由度」を検証するために、たいへん僭越ながら、急きょ「県境なき愚者団」を単独で立ち上げました。「報道の自由度ランキング」の評価基準となっている項目について、日本の現状と大まかに照らし合わせてみましょう。

「報道の自由度ランキング」は、世界各国のジャーナリストや法律家、人権活動家のアンケートに基づいて作成されます。評価基準は「多元性、メディアの独立性、多様性、透明性、メディア環境と自己検閲、法的枠組み、ニュースと情報の生産を支えるインフラの質」の7項目。さっそく、SNSも含めた「世間話の自由度」について検証してみます。

●多元性──リアルな世間話では、天気やスポーツ、もしくは近所や社内の噂話がほとんど。SNSにおいては、何を食べたかとかどこに行ったかとか、もしくは昔話や自慢話ばかり。どちらも多元性があるとはとても言えない。

●メディアの独立性──個人の場合のメディアとは、すなわち自分自身のこと。リアルでもSNSでも、誰もが自分が置かれている立場や世間的なしがらみを常に意識している。そのくせネット上で匿名になると、いきなり威勢良くなったり乱暴な言葉で誹謗中傷に精を出したりする人も少なくない。独立性とは程遠い状況である。

●多様性──リアルの世間話は、会社の同僚や地域社会でつながりがある顔ぶれなど相手はたいてい同じである。SNSもその特性上、同じ価値観や似た趣味趣向を持った人との接点がどんどん増えて、世界が狭くなっていく。どちらも多様性はまったくない。

●透明性──腹の中の不透明性においては、たいていの国に引けを取らない。個人においても「透明性が高いタイプ」はたいてい嫌われるし、組織において「透明性の向上」を実現しようとする人は間違いなくつぶされる。

●メディア環境と自己検閲──リアルな世間話や実名のSNSにおいては、誰もが空気を読むことに長けていて、「触れてはいけない話題」や「今は言わないほうがいいこと」へのセンサーを敏感に働かせている。もし自己検閲大好き度ランキングがあったら、間違いなく世界の中で上位に食い込むだろう。

●法的枠組み──プライバシー保護とか名誉棄損とか、世間話の暴走を抑止することにつながりそうな法律はいちおうあるが、ほとんど機能していない。それはつまり「枠組み」がグダグダだということ。また、匿名のSNSにおける「言葉の暴力」や「正義の名を借りたイジメ」の横行に対して、法律は有効な抑止力になってはいない。

●ニュースと情報の生産を支えるインフラの質──これはつまりジャーナリズムやメディアのこと。「報道の自由度ランキング」がG7で最下位であり続けている国の「インフラの質」が、けっして威張れたものではないというか、お寒い状態であることは自明の理である。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト