何十年も昔のことであっても被害者は忘れない(イメージ)
「Xさんは息子以外の複数の子供にも、あなたの親からいじめられた、と話していたそうで、ほかの親御さんからも園に相談が来ているそうでした。園長先生からは”改めて謝罪されてみては”と言われたので、そのすすめに従ってみてはと改めて夫に相談しました」(本田さん)
ところが、その話を夫にしても、やはり覚えていないの一点張り。さらに「そんなことを蒸し返して子供まで巻き込んで」と怒鳴りあげたのだ。それをきっかけとして本田さんは、Xママも許せなかったが、夫にも不信感を抱いたと話す。
「Xママを責める前に、本当にいじめてないのか、しっかり思い返してほしかったんです。何度も問い詰めたら、子供らしい”からかい”みたいなものがあったと白状しました。なのに、謝ろうともせず、息子には”Xママとしゃべるな”とまで言う始末。私もいじめられた経験があり、Xママの気持ちはわからないでもないし、忘れようとしても忘れられない。息子を巻き込んだことは許せませんが、夫にも責任はある」(本田さん)
その後、誰かがXママに謝罪をしたとの噂が広まると、騒動自体もいつの間にか終息した。しかし、夫は未だに「そんな昔のことを今さら」と納得いかないという態度を崩さないのだと、本田さんはうなだれる。
「僕の責任ではあるんですが……」
本田さんの夫に限らず、いじめ加害を指摘される側は、とぼけているわけではなく本当に過去の出来事だから覚えていないと言うことも少なくない。だが、やはり「いじめられた側」の記憶は鮮明なのだろう。都内の会社員・坂本信一さん(仮名・40代)は半年前、思いもよらないところで「反撃」を受けたと話す。
「SNSで見知らぬ人から”いじめっ子 “とだけ記した不気味なメッセージが届き、嫌がらせなのかと思い無視していました。ところが、小中学校の同級生である私の友人にも同じユーザーから同様のメッセージが届いていたんです。正直、このユーザーの心当たりはありました」(坂本さん)
実は坂本さんと友人は、小学校高学年から中学まで、男子生徒・Y氏のことを毎日のようにからかっていた。頭を叩いてみたり、格闘技の技をかけてみたり、水泳の授業中に女子生徒の前で水着をはぎ取ったりしたが「当時はそれが面白いと思っていたし、そいつ(男子生徒)も喜んでいたように見えた」と振り返る。しかし、冷静に考えてみれば、坂本さんにとっては悪ふざけでも、彼にとっては「凄惨ないじめ」そのものだったのだ。Y氏のフェイスブックを見つけた坂本さんは、Y氏の書き込みを見つけて震え上がった。
「私や友人、そして当時の担任の名前をあげて、こいつらからいじめられた、何度も死を考えた、と書かれていました。さらに、私たちの職業や家族の有無まで細かくありました。メッセージを送ってきたのは別のユーザー名でしたが、どちらもYがやっているに違いないと警察に相談もしました」(坂本さん)