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感染症の専門家・岡田晴恵氏が訴える 忘れてはならないコロナ禍の次なるパンデミックの脅威

「次なるパンデミックの脅威を忘れてはなりません」と岡田晴恵氏が訴える

「次なるパンデミックの脅威を忘れてはなりません」と岡田晴恵氏が訴える

 人間は様々な感染症とともに生きていかなければならない。だからこそ、ウイルスや菌についてもっと知っておきたい──。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』は今回で最終回。岡田さんは「コロナ禍の次なるパンデミック」の恐ろしさついて綴る。

 * * *
 1997年、香港で高病原性(強毒型)H5N1型鳥インフルエンザが流行し、18名が重症肺炎に、うち6名が死亡しました。この鳥インフルエンザの人の致死率は3割です。通常の鳥インフルエンザは鳥に感染しても、呼吸器と消化器のみに感染し症状を出しませんが、H5N1型鳥インフルエンザは鶏に全身感染を起こし、ほぼ100%殺す強毒型でした。

 この鳥ウイルスの人への感染が続き、遺伝子の変異を起こして「新型インフルエンザ」となった場合には大変な健康被害が出る可能性が考えられました。そこで香港政府は、人への感染源である家禽をすべて殺処分し、ウイルスの感染源を絶つという対策を即座に実行し、流行を収束させたのです。

 しかし、その後も、この強毒型鳥インフルエンザは世界各地へと広がり、流行地域では人への感染伝播例も増え続けました。人への感染は不思議と小児と若年成人が大半を占め、高齢者の感染は少なく、ウイルスは呼吸器上皮から血流を介して全身感染を起こし、多臓器不全となって致死率は60%にもなる恐ろしいものでした。

 さらに流行を繰り返す間に、遺伝子変異によってH5N1ウイルスはいくつかの系統に分岐し、他のウイルスと交雑してH5N2、H5N6、H5N8など新たなウイルスが誕生し、世界各地に拡散。その地域でまた人への感染も起こり、様々なウイルスによるパンデミックの可能性が増大してきたのです。

 これに対し、WHO、国連食糧農業機関(FAO)、国際獣疫事務局(OIE)は、鳥から人への感染が起きた際には、発生局所で流行を封じ込めて、パンデミックの発生を阻止する態勢を強化し、さらに幅広い緊急対応計画と事前準備を確立しておくことを各国に勧告し、その指導・準備を進めました。

 一方、中国政府は、2017年9~11月に全国一斉に全家禽(50億羽以上で接種率89%以上)へのH7N9とH5N1混合ワクチンの接種を断行。H5N1型ウイルスの流行はほぼ完全に制圧され、最悪のパンデミックの可能性をひとまず減少させました。

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