「事故はお互い様なので恵匠は悪くないよ」

 ところが翌年2月に悲劇は待っていた。レース中に新井がバランスを崩し、そのあおりを受ける形で森と接触し落車。森は緊急搬送され、長期離脱はおろか、選手生命の危機に立たされたのだ。

 一方、軽症で済んだ新井は事故から4か月後、準決勝で2着となり優勝戦に駒を進めた。するとレース後のインタビューで終了間際「(事故後)こういう場に立つのが初めてなので、ちゃんと謝っておきたいなと思って。今大丈夫ですか、少し」とインタビュアーに切り出した。そこで森や関係者、ファンに向けて「自分のせいで森さんを怪我させてしまって本当にすみませんでした。これからはなるべく安全なレースを心掛けて強くなっていきたいと思います」と涙ながらに謝罪した。

「森のファンからの心無い誹謗中傷もあったと聞いています。それだけでなく、森はオートレース界でも貴重な選手。新井にも様々な思いが伝わり、自責の念に駆られて異例の公開謝罪になったんだと思います」(前出・スポーツ紙記者)

 そんな新井に対して、森は翌日に粋な計らいをした。オートレースでは選手への応援FAXを受け付けており、そのFAXはレース中継で読み上げられ、直接選手に届けられる。そこで森から新井へのメッセージが読み上げられたのだ。そこにはこう書かれていた。

「レーサーである限り、事故はお互い様なので恵匠は悪くないよ。オートレースファンのみなさんも同じ気持ちだと思います。これからもまた、いいレースでオートレースを盛り上げていきましょう」

 森を名乗る偽物のFAXという可能性もあったが、発信元は森の関係先だった。FAXを受け取った新井は涙で言葉を失ったという。

「その後、新井は森の整備を手伝うなどして森を支えることへ積極的になり、森の復帰戦には当日川口で出場が無かった新井もレース場に駆けつけていました。勝利後に戻ってきた森を出迎えたんですが『本当に凄い』と感極まって涙しており、活躍の姿に自分も励まされているようです。今後はG1やSGなどの大舞台で、森と新井が決勝で争う姿も見られると思います。森の活躍を励みにして、新井も積極的に勝ちに来るでしょう」(前出・スポーツ紙記者)

 表彰式で交わす言葉が楽しみだ。(文中敬称略)

関連記事

トピックス

雅子さまが三重県をご訪問(共同通信社)
《お洒落とは》フェラガモ歴30年の雅子さま、三重県ご訪問でお持ちの愛用バッグに込められた“美学” 愛子さまにも受け継がれる「サステナブルの心」
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
「とにかく献金しなければと…」「ここに安倍首相が来ているかも」山上徹也被告の母親の証言に見られた“統一教会の色濃い影響”、本人は「時折、眉間にシワを寄せて…」【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン