「はやく皆さんとお会いしたいとクランクインを心待ちにしていたのですが、私はとても“緊張しぃ”ですし、引っ込み思案で自分から話しかけていくのがすごく苦手で……。撮影回によっては重たい空気なのかなとか現場の雰囲気を想像して、少しでも心の準備をしたいと、本多忠勝役の山田裕貴さんがパーソナリティを務めるラジオで予習をしたんです。
放送では『どうする家康』でのエピソードを楽しそうに話されていて、現場では皆さん本当に仲がいいんだなと知れて、ほっとしました! そして、自分も人見知りしていないで殻を破らなきゃ、って。緊張のあまりどんな会話をしたか覚えていないことが多々あるので、まわりの方々とのコミュニケーションも楽しみに現場へ行けるようになりたいと思っています」
そこで準備した“秘策”もあったのだとか。
「役を離れると趣味の話をされたりすると聞いて、緊張せずに皆さんとおしゃべりができるように私もテーマを用意しました(照れ笑い)。宮城出身で熱烈な楽天ファンなので、野球のお話ができたらなって。それこそ(元プロ野球選手・山田和利さんを父に持つ)山田さんとはプロ野球のお話ができるんじゃないかなとか、WBCで盛り上がったところで野球トークはタイミング的にもばっちりですし。でもひとつだけでも心もとなく、スポーツは全般的に入れておきました」
そんなクランクイン前の緊張をほぐしてくれたのが、実家の母からの贈り物だった。
「撮影が始まる前に所作のお稽古や着物での振る舞いに慣れる練習をしていて、1日オフの日は家でも浴衣の時間を作るようにしていたんです。着ていたのは母から譲られた紺色の浴衣。母が選んだ浴衣に袖を通して、パワーを充電していました」
今後の人生の財産として、五徳である時間を大切に積み重ねていきたいと語る。この経験を通して役者としても、久保史緒里個人としても、ひとまわり成長したいと誓った。
◆取材・文/渡部美也