唯一の“弱点”も克服しつつある
上の世代のタイトル保持者を次々と撃破している現状がある以上、同年代やさらに下の世代からライバルが登場するかが注目される面もあるだろう。松本氏はこう言う。
「羽生さんが25歳で七冠を達成したあと、棋聖戦で羽生さんを破り、七冠の一角を崩したのは、羽生さんより歳下で22歳の五段だった三浦弘行さんでした。そうした過去の例を踏まえれば、今後『藤井八冠』が誕生したあと、それを崩すのは同世代か歳下の棋士という可能性もあるでしょう。羽生さんが七冠を獲った活躍を見て棋士を目指した人はたくさんいます。同様に藤井さんの活躍を見て将棋を始めた人たちもいずれは表舞台に出てくる。とはいえ、それは早くてもう5年先、10年先とかになるでしょう。それまでは、藤井さんの地位を根底から脅かすまったく新しい世代のライバルというのはなかなか登場しないのではないか。
一方で、ライバルがいてもいなくても、盤上の真理を探究しようとする藤井さんの姿勢に変わりはないのではないでしょうか。今後二番手以降をさらに突き放しても、モチベーションが崩れずさらに強くなってしまいそうなのが凄いところなのです」
藤井七冠に、弱点は見当たらないということなのか。
「もともと、食べ物でキノコが苦手というのが、藤井さんの唯一の弱点と言われていたのですが、最近はマイタケのテンプラが食べられるようになったそうで、この弱点まで克服しつつあります(笑)」(松本氏)
20歳の天才棋士の「一強時代」はまだまだ続くことになりそうだ。
※週刊ポスト2023年6月23日号