ライフ

「水をもらうのも苦労した」中国出身料理人・孫成順さんがとっさに思いついた伝え方とは【連載「日本語に分け入ったとき」】

中国出身料理人の孫成順さん

中国出身料理人の孫成順さん

 日本語を母語としないながらも、今は流暢でごく自然な日本語で活躍している外国出身者は、どのような道のりを経てそれほどまで日本語に習熟したのか。日本語教師の資格を持つライターの北村浩子氏がたずねていく。今回はお茶の間でも人気の高い中国出身料理人の孫成順さんにうかがった。【全3回の第1回】

 * * *

 長く続くNHKの朝の情報番組『あさイチ』に「3シェフ夢の競演」という企画がある。イタリア料理の落合務さん、日本料理の中嶋貞治さん、そして中華料理の孫成順さんが、家庭でも再現できる新作レシピを披露する不定期のコーナーだ。個性際立つ3人と司会者とのやりとりも楽しく、中でも真っ白な長いコック帽がトレードマークの孫さんは、柔らかな明るさと笑いを場にもたらすムードメーカー。六本木の本店をはじめ、阿佐ヶ谷、日本橋にも支店がある「中國名菜 孫」のオーナーシェフだ。

 店のホームページに書かれたプロフィールには「25歳にして中国料理最高位『特級厨師(とっきゅうちゅうし)』の資格を取得」とある。「多くのお店や弟子を持って50歳以上の年齢になってもなれるかなれないか」というレベルの「プロ中のプロ」に与えられる称号なのだそうだ。孫さんが取得した当時、特級厨師は中国でも20人ほどしかいなかったと言われているとか。あの広い中国で……!

 そんな、とてつもない資格を持つ孫さんはどのような経緯で来日したのだろう。日本語はどうやって身につけたのか。

 六本木の本店でお話を伺うことになった。店の前でカメラマンの到着を待っていたら「あら、ここ孫さんのお店」「あさイチの」「ここだったのね」という女性たちの声が通りから聞こえてきた。さすがの知名度だ。

 スタッフの方が店内に招いてくれる。金魚が泳ぐ大きな壺。穏やかな色の照明。上品で清潔感のある、喧騒とは無縁の空間が広がっていた。どうもどうも、と孫さん登場。白いコックコート姿が格好いい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン