長期化する捜査の過程で浮かび上がってきた市川猿之助(47才)の両親の遺体に残った頭部の傷。ふたりの声なき声は、捜査の突破口となり得るのか。猿之助の証言に残された疑問とともに詳報する。
「私たち親子は仏教徒であり、輪廻転生を信じている」。猿之助は警察の聴取に対し、そう語っているという。両親の死から1か月以上が経った。仏教の教義では「死者の魂は四十九日で行き先が決まる」という。極楽浄土に行くにせよ、現世やそのほかの世界に転生するにせよ、敬虔な仏教徒である猿之助にとって両親の四十九日法要は欠かせないはずだが、その見通しはまったく立っていない。
「捜査がいまだ継続中です。5月末の段階で、警察は猿之助さんを父親の市川段四郎さん(享年76)と母親(享年75)に対する、なんらかの容疑で事件化の判断をする方針でしたが、思いのほか検察が慎重だった。検察からは“もっと時間をかけて証拠を精査するように”と注文をつけられ、捜査現場からはため息が漏れました。事件化を見込んでいたのに、また振り出しに戻されたわけですから」(警察関係者)
事件化の判断が延びることで、本誌・女性セブンが報じてきた「猿之助のセクハラ・パワハラ」の深刻な被害についての調査は「捜査中である」ことを理由におざなりになっており、一部には復帰待望論さえ囁かれている。
段四郎さん夫婦の亡骸は、親族だけで荼毘に付されると報じられてきたが、「近しい親族にもまだ葬儀の詳細が伝わっていない。6月に入ってからも、ご遺体は“重要な証拠”として警察関連施設に安置されているようだ」(梨園関係者)という。
騒動から1か月が経っても、猿之助本人は都内のメンタルケアの専門病院に籠もっており公にはまったく姿を見せていない。それに加え、両親の遺体さえ親族の元に戻されないという異常事態が続いているようだ。
「“一家心中”騒動の前夜、猿之助さんは両親と話し合い、『もう生きていても意味がない。家族みんなで死んで生まれ変わろう』との結論に至ったことから、一緒に向精神薬を服用したという趣旨の証言をしているようです。それだけ聞けば、一家心中であって、事件ではない。
司法解剖の結果、両親の遺体からは睡眠導入剤『サイレース』などの成分である、ベンゾジアゼピン系のフルニトラゼパムが検出されました。睡眠導入剤は向精神薬の一種なので、死因は『向精神薬中毒の疑い』とされました」(全国紙社会部記者)
ただし、そこに大きな疑問が残ったため、検察担当者は早期の事件化を見送ったというのだ。
「その薬で自殺するには、1万錠以上を摂取する必要があるとされ、フルニトラゼパムの血中濃度は、致死量以下だったという分析もあります。また、猿之助さんは薬をのんで意識を失った両親の頭にビニール袋をかぶせ、『両親が死んだのを見てから地下に行き、首を吊ろうとした』と証言しています。
死因が『窒息死』ではなかったことは明らかですが、ビニール袋をかぶせたことが死期を早めたということはなかったのかが焦点に浮上しました。“本当の死因”について、徹底的に捜査しろ、というのが検察からの注文だったんです」(前出・警察関係者)