夏場の降圧剤は危ない

 秋津医院院長の秋津壽男医師は、こんな場面に遭遇したという。

「糖尿病治療中の低血糖は、不意に訪れます。私が歌舞伎座で観劇中、近くの桟敷にいた60代くらいの男性がガタンと倒れたことがありました。傍らの奥様に糖尿病の薬を飲んでいるかと尋ねたら、『飲んでいる』と。低血糖症が疑われたのでコーヒー売り場の砂糖を飲ませたら、みるみる元気になりました。薬の服用後になんらかの事情で食事が摂れないような場合、低血糖を起こすリスクはより高まります」

 谷本医師は、これから訪れる“気候の変化”にも注意が必要だと言う。

「脱水気味になったり、暑さで食欲不振になったりしがちなこれからの時期は、熱中症のリスクに備えると同時に、低血圧や低血糖に要注意な時期と言えます」

 それは「薬の飲み方」にも通じる話だ。

「冬と同じように降圧剤を飲んでいると、水分不足になりがちな夏場は血圧が下がりすぎるケースがあります。また、つい最近も、胃腸炎で食事が摂れず脱水気味のところに、いつも通りにインスリン注射をしたせいで低血糖になり、病院に運ばれてきた患者さんがいました」(同前)

 上医師は、自らの体調を見極めることが大事だと改めて強調する。

「ストレスや寝不足、二日酔いでも血圧は上がります。それは自然な変動なので、本来、それだけで血圧を下げる薬を飲む必要はありません。目標とすべき血圧の数値も人それぞれなので、薬で下げるとだるくなる場合は医師と相談の上、減薬などの判断も必要です。自分にとって調子がよい状態を維持することが大事です」

 医療界が決めた“基準値”よりも、自らの「実感」に基づく判断が正しいこともあり得るのだ。

※週刊ポスト2023年7月14日号

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