小渕優子・自民党組織運動本部長(時事通信フォト)
茂木敏充・幹事長を潰すためにあえてスキャンダルで閣僚辞任した小渕氏を大臣に起用するという権力維持最優先の人事構想なのである。
工作は跡目問題でもめる最大派閥・安倍派にも及んでいる。岸田政権の党内基盤は現在、「主流3派」と呼ばれる岸田派(46人)、麻生派(55人)、茂木派(54人)が支えているが、茂木氏を交代させると茂木派は反主流に回る。岸田首相が総裁選で再選するには、安倍派(100人)の支持が欠かせない。
そのため、首相は安倍派の後継者候補で「5人組」と呼ばれる松野博一・官房長官、西村康稔・経産相、萩生田光一・政調会長、高木毅・国対委員長、世耕弘成・参院幹事長を揃って重要閣僚や党の要職に起用してポストで厚遇してきた。政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。
「茂木氏を幹事長から交代させるとなると、安倍派を怒らせるわけにはいかない。総裁再選までは松野官房長官や萩生田氏ら5人組は重要ポストで処遇するでしょう。一方で、岸田首相は安倍派のタカ派色を薄める作戦を進めています」
通常国会終盤に成立させたLGBT理解増進法がそれだ。
安倍派を骨抜きに
LGBT法の制定には安倍氏の政治基盤だった保守系団体などが反対し、自民党の保守派議員にも抵抗が強かったが、岸田首相は日本維新の会の主張を丸飲みして与党案を修正、自民、公明、維新、国民民主党の賛成で成立させた。そのため法案の採決時に自民党では安倍派を中心とする保守派の議員から大量造反が出ると見られていた。
ところが、フタを開けると、衆院の採決で安倍派の杉田水脈氏が体調不良を理由に本会議を欠席、同じく高鳥修一氏がトイレに駆け込んで採決に出なかったものの、公式な造反はゼロとされた。