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新世代の『極道の妻たち』を作りあげた関本郁夫監督の著『映画監督放浪記』は昭和・平成の娯楽映画・ドラマの歴史絵巻だ

関本郁夫氏

関本郁夫氏

『ウルトラセブン』のアンヌ隊員役・ひし美ゆり子、大島渚監督『愛のコリーダ』でハードコアに挑戦した松田英子。昭和の日本映画ファンに甘酸っぱい記憶を刻んだ濃艶女優たち。彼女らをことごとく一糸まとわぬ姿にしてきた監督の一代記が出版された。著者は関本郁夫氏。500ページ以上に及ぶ大著のタイトルは『映画監督放浪記』だ。ライターの藤木TDC氏がその魅力を解説する(文中一部敬称略)。

 * * *

 関本は1961年(昭和36年)に東映に入社し、1970年代にかけて任侠映画、実録やくざ映画など、昭和世代の男性が熱狂した数々のフィルムに関わってきた映画職人である。

 だが、その名を知る者は少ないかもしれない。撮影所時代にはけっして表舞台に立たず、2本立てのB面というべき添え物作品や、大作封切りまでの穴埋めお色気番組をまかされることが多かったからだ。たとえば彼の監督デビュー作は深作欣二監督の『仁義なき戦い 頂上作戦』の同時上映『女番長、タイマン勝負』(池玲子主演、1974年)だった。しかしその映画はメインの「仁義なき戦い」を食うほど途轍もなく面白く、1970年代には彼の映画を特集した「関本郁夫オールナイト」が頻繁に組まれるほど人気があった。

 そのように映画の裏街道を歩いてきた監督が、人生と仕事を余すところなく回顧したのが『映画監督放浪記』である。

 たとえば『女番長 タイマン勝負』にはこんなエピソードがある。撮影中、主演女優、池玲子が関本のもとを訪ねてくる。

「『ねえ、関本さん、今日のラッシュよかった?』
 『よかったよ』
 『玲子、きれいだった?』
 『きれいだったよ』
 『そう……よかった、ウフフフフフ』」(同書161ページ)

 池玲子はなぜ関本を訪ねたのか。このあと何があったのか。それは読んでのお楽しみだが、彼女が関係者に愛された理由がよく分かる逸話が続く。

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