『私のバカせまい史』プロデューサーの島本亮氏
「ゴールデンで勝負をするとなった時に、VTRと研究発表のバランスは論点になったんです。VTRをしっかり作り上げて、スタジオでそれを見るという形式のほうが視聴率を考えれば王道ではないか、と。ただ、それはこの番組の寿命を逆に縮めてしまうんじゃないかという結論に至りました。
研究発表をする人も一緒に調べて、なんでこうなったのか=“歴史のターニングポイント”を自分の言葉で説明する。その研究発表という柱をブラしてはいけないだろうと。単なるアーカイブ番組ではなく、ちゃんとそこに研究があって、発表があるというものにしたかったんです。
『「犬神家の一族」のスケキヨの足史』では、VTR部分も実際に湖に行ってどんなふうに足を入れたのか?という取材ロケもやりました。やっぱり『秘蔵映像』と『調査研究』の掛け算が面白いし、この番組の大事なところだと思ってます」
では、芸人は研究発表に至るまでどこまでかかわっているのだろうか。
「バカリズムさんのように、研究テーマの発案からご自身で行い、一緒にスタッフと資料を調べて、研究発表の構成台本やマルチ画面の原稿も全部自分で書くという人や、こちらがテーマを提案して、リサーチや打ち合わせの中で“もうちょっとこういう部分も知りたいです”“こういう解釈もありますか”って発表内容をブラッシュアップしていく人もいたりと、テーマや人によって様々ですね。回を追うごとにどなたもグイグイ力が入ってきます。
みなさん何度も打ち合わせに参加してくださるので、内容が染み付いてご自身の言葉で発表してくださっていますね。そこもこの番組のカロリーの高さと本気度をあらわしているなと思います」
そんな中で島本がもっとも印象に残っているというのは、パイロット版初回に霜降り明星・せいやが研究発表した「武田鉄矢ものまね進化史」。最初にメディアで武田鉄矢のものまねをしたのは俳優の佐藤B作で、しかも、ものまね番組ではなくドラマ『翔んだカップル』の劇中だという意外な事実を突き止めたり、進化のターニングポイントになった出来事を解説し、そのものまねの変遷を紐解いた。
「『武田鉄矢ものまね進化史』はこの番組のすべてを表現しているなと思いましたね。武田鉄矢さんのものまねを誰が始めて、それがどんな理由でどう変わっていったのかが見事にわかった。放送を武田鉄矢さんも見て感心してくださったというのを聞いて、すごく研究者冥利に尽きるいいテーマだったなと思いました」