史上最年少の市長となった高島崚輔氏のスピーチを指導した千葉佳織氏
「高島さんが市長を目指すことになった時に『演説をより磨きたい』という相談があり、選挙の1か月ほど前からレッスンを受けていただくことになったんです。基本的には兵庫県にいらっしゃったので、オンラインでのレッスンでしたが、東京に来るタイミングでパーソナルトレーニングも受けてもらいました」
高島氏の課題は、声のトーンだったという。
「高島さんはハーバード大でスピーチを学んでいたり、自分のことを深堀りするエッセイを書いていた経験があり、話す内容については熱量・思いと政策のバランスが良く、わかりやすいお話しをされていました。ただ、多くの人に声を届けるために、声の高さがどれぐらいであればいいのか、ということに苦慮されていた。高島さんは、ご自身の声がちょっと高いことを変えたいと思っていたんですよね。若い彼は、高い声だともっと若々しく見えてしまい、貫禄が出にくくなってしまう。そのため、まずは老若男女に“しっかりした印象”を持ってもらえるような理想的な声の高さを探していったんです。
はじめに、そもそも声を出すときには胸式呼吸ではなく、腹式呼吸を意識しながら話す訓練をしてもらいました。腹式呼吸にすることで、多くの人が聞き取りやすい、安定した声色を作ることができるからです。次に、一度意識的に高い声を出してもらい、その後で今度は低い音を保ちながら声を出すという練習をしてもらいました。そうすることで、自分の高い声と低い声の違いを認識してもらうのです。これまで高さなどを気にせず無意識に出していた声を、いかに意識的に出せるようにするか、という訓練を何度も何度も重ねました」
同時に、身振り手振りのジェスチャーの訓練も行なった。どのタイミングで、どんな角度で、どんな形の手を出したら話が分かりやすく伝わるかを追究するのだという。
「政治家の方でありがちなのですが、スピーチの際に一言一言、ずっと手を前に出して振っているケースがあります。これでは何が強調したい部分なのかが伝わらない。このスピーチではどこを強調したいのか、ということを我々が政治家の方とご相談して、『ではこのポイントで、こういう風に手を上げましょう』というアドバイスをさせていただきます。また、毎回手を開いた状態で上げたり振ったりするのではなく、人差し指だけを上げたり、聴衆を指し示すようなジェスチャーをしたりと、バリエーションをつけることも重要です。
高島さんからも、スピーチのどこを強調したいのかをお聞きしながら、どこで手をあげるべきなのか、一緒に追究していきました。高島さんは、実際にレッスンを受け終わった後の次の日の演説で、毎回聞きに来てくれる支援者の方から、『全然違う、すごく変わったね!』 と言ってもらえたそうです。その後に登壇した場面でも、間の取り方で情報を分けながら、身振り手振りも加えてわかりやすく話す技術を巧みに使い、聴衆をグッと引きつけ、ものすごい拍手を受けていましたね」