「株式会社カエカ」代表取締役の千葉佳織氏

政治家の演説に必要なものについて語ってくれた千葉氏

岸田首相のスピーチは「ぶつ切り」すぎる

 千葉氏に、政治家の演説に必要なものは何かを聞くと、こんな答えが返ってきた。

「政治家は事実を羅列し、詳細な説明をした硬い話をすることが多いのです。『もっと支持率を上げたい』『有権者に自分が熱心に活動をしていると思わせたい』のであれば、そもそも自分自身がこの政策に関わる上で、どんな話を聞き、何を感じて、どうしてここに熱を入れたいと思っているのか、といった『自分らしい言葉』を語らなければ、やはり人の心は動かされません」

 千葉氏は、岸田文雄・首相のスピーチについてはこう語る。

「キャリアの長い議員さんに多いのですが、岸田総理もぶつ切りになる話し方をします。『それが、今年度、G7議長国、である、日本に、課された、使命といえます』と、一言一言切って話す。普通は文章にしたときの句読点で話を区切るのですが、そうではないところで区切る回数が多い。これはキャリアの長い議員さんに多い、文字の区切り方です。

 その中に、さらに『えー』、『あのー』という言葉が頻繁に入るので、余計聞き手は内容が頭に入りづらくなってしまいますし、自信がないようにも見えてしまいます。話し方を変えるだけでも、岸田総理の印象は大きく変わると感じています」

「女の話は長い」という発言で東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長を辞任した森喜朗・元首相に代表される政治家の“失言グセ”も、スピーチトレーニングを受けることで修正可能な場合があるという。

「失言癖のある方は、意外とこれまで誰からもそのことについて指摘されてこなかったので、本人が何がいけなくて失言してしまうのか、気づいていない場合が多くあります。重鎮の方ほど、秘書の方が進言しづらいということもあるでしょうし……。

 そういった方とは、まず過去に話した音声を一緒に振り返って、『これはこういう意味に聞こえますよ。なぜそう聞こえるかというと、こういう理由だからです』と問題点を共有するところから始めます。その後、話し方のトレーニングを進めていきながら自分のスピーチの傾向を掴んでもらうことで、自身がどういう思考回路で失言に至ってしまうのかがわかってくると思います」

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