かつて暴力団の主な資金源だった「賭博」研究のため、全国から集まった警察の賭博取締り担当官を前に花札を配ったりして賭博を実演する警視庁捜査4課のベテラン刑事。1972年(時事通信フォト)
ついにヤクザを辞める気になったのかと思ったが、そうではなかった。「ある会社の社長の仕事を手伝うようになり、このところ毎日のように朝から呼び出されて忙しい」と幹部はいう。「ヤクザを辞めても仕事ない。生活保護の世話になるのがオチだ」。懇意にしている人が経営する不動産関連会社の事務所に毎朝のように出かけ、頼まれた仕事をすることを”普通の会社員”と表現したのだ。幹部ともなれば本家事務所の当番でもなければ、普段は自由業と同じ。コロナ禍ではそれもなくなり、自分が所属する組事務所に一日中、詰めていることもない。自分の都合より他人の予定に合わせるということが、彼の考える会社員という感覚らしい。
聞けば早朝は6時に行くことも多く、予定があれば土日も出かけ、「これから関西へ行ってくれ」と言われれば新幹線に飛び乗り、「明日九州へ飛んでくれ」と頼まれれば、朝一で飛行場へ向かうという。一般的な企業や普通の会社員よりかなりハードな状況だが、そこは問題ではないという。「ヤクザはパワハラありきのブラック稼業。カタギとはモラルの概念が違う。そこにクレームをつけるような習慣も文化もない」と幹部はいう。
「ヤクザは人気商売。人との付き合いがなければ仕事にならず、声をかけてくれる人をいかに見つけていけるかが生き残るための道」(幹部)。今時、ヤクザとわかっていても使ってもらえ、稼げれば御の字ということのようだ。