ライフ

「試し撃ち」はできない……猟銃選びから免許取得、獲物探しまで「狩猟事始め」【連載・元NHK自然番組ディレクターが明かす「僕が猟師になったワケ」】

銃猟の中にも様々なスタイルがある。黒田氏が選んだのは一人で山に入って獲物を歩いて探す「単独忍び猟」だった(撮影:大川原敬明)

銃猟の中にも様々なスタイルがある。黒田氏が選んだのは一人で山に入って獲物を歩いて探す「単独忍び猟」だった(撮影:大川原敬明)

 NHKの自然番組を制作していたディレクターの一人が今夏、北海道へと移住した。前年まで札幌に赴任していた彼は、50歳を迎えたのを機にNHKを辞めて「猟師」になる道を選んだという。7年前、札幌に転勤になってから、初めて狩猟免許を取ったという元ディレクターは、どんなふうに銃猟にのめり込んでいったのか――。

 元ディレクターの黒田未来雄氏がその経緯を明かすシリーズの第2回。新刊『獲る 食べる 生きる 狩猟と先住民から学ぶ“いのち”の巡り』より抜粋・再構成。

 * * *

 北海道への転勤を機に、僕は狩猟を始めることにした。

 一口に狩猟と言っても、道具は鉄砲だけとは限らない。大きく分けて、銃と罠と網に分かれる。三つの猟法について、それぞれ個別の免許が必要だ。

 インターネットで調べたり、銃砲店に足を運んだりしてリサーチした結果、僕は銃と罠の免許を取得し、まずは銃で狩猟を始めることにした。ところが、狩猟免許を取得しただけで銃猟が始められるわけではない。銃の所持自体に、警察が発行する別の許可を申請しなくてはならないのだ。危険性の高い道具であるため法規制は厳しい。講習会と筆記試験、実弾を撃つ射撃教習をクリアした後には、家族や友人、更には職場から周辺住民に至るまで、警察による入念な身辺調査が行われる。精神障害に関する医師の診断書も求められる。

 銃の購入について最も悩ましかったのが、どんな銃を選ぶかだった。種類が多く、獲物や用途によって構造も違えば使う弾も違う。カモなどの飛んでいる鳥を撃つには、たくさんの小さな粒が飛び出す散弾銃。僕の憧れだったエゾシカなどの大型獣を獲るなら、大きくて重い1発の弾頭を撃ち出すライフルが最適だ。

猟期は10月から翌年3月まで

 しかし、ここに一つ落とし穴がある。様々な銃の中でも、ライフルに限っては、最初に銃の所持許可が下りて10年が経過しないと持てないのだ。

 だからと言って初心者が鹿を撃てないわけではなく、ハーフライフルなる銃が存在する。機能的にはライフルに近いが、法律上は散弾銃に分類される。1丁の銃で銃身だけを取り替えて、散弾とハーフライフル用の弾を両方撃てるものもある。とにかくややこしく、素人にはよく分からない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト