芸能

立川談春の弟子として“ひとりでガンバった”立川小春志が真打昇進 花嫁姿に師匠の目にも涙

真打になった立川小春志(イラスト/佐野文二郎)

真打になった立川小春志(イラスト/佐野文二郎)

 放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、真打になった立川小春志の花嫁姿について綴る。

 * * *
 夏になると両親やら師匠達のことを柄にもなく想い出す。今一番会ってみたいのはやはり母親だ。「時間と他人にルーズなのを田舎っぺと言うんだよ」とピシャリ言う、ちゃきちゃきの東京の人だった。

 私の師匠にあたるのはクレージーキャッツ、ドリフターズの演出を手掛けた日劇の塚田茂。放送作家として『夜のヒットスタジオ』の企画などでテレビ界では超有名。生き方、暮らし方、芸人との距離の置き方などをサラリと教えてくれた永六輔。「芸」の方の師匠はご存じ立川談志。この3人の濃すぎる血が私の中に流れている。今の若い人に言わせれば「オールド・エンターテインメント」とでも。

 しかしAIもいいが、ものを生み出すには職人同様、師から弟子へというのがいい。“師弟関係”だ。私は渋谷生まれだから“師弟”というより“シティ派”ではあるが。

 7月30日、コクショ(さゆりではない)の中、昼間明治記念館で新しい真打の大々的な披露パーティ。前夜の隅田川花火大会に負けない人出だった。18歳の鼻ったれ小僧だった立川談春が談志から「噺家とつきあうと世間知らずのバカになるから、お前と志らくは高田のところへ行って水割りでも作ってろ」。昼は談志の世話、夜は私の身のまわり。その小僧が立派になって今や立川談春師匠。女の子の弟子で“こはる”と名乗ってたのが17年間つとめあげこの度「小春志」となって真打昇進。

 きびしい師匠なので何人も入って来てはみな辞めていった。ひとりこはるが弟子修業をガンバッた。それを知ってるから500人の出席者みんな温かく門出を祝った。

 何がおどろいたって途中、宴会場からいなくなったと思ったらMCが「それでは新真打のお色直しも済みました」と出てきたら見事な花嫁姿。きれいな角隠しである。談春「私は止めたんですが、当人がどうしても、ときかないんです」。きっと真打披露も結婚披露も人生の披露目、全部ここで済ましちゃえという料簡だったのだろう。

 最後の大締め、志の輔、志らく等一門ズラリ並ぶ壇上へあがった私。第一声が「茶番です」。ドッカーン。うける。「しかし大師匠談志が見たらよくやったとほめたと思います」。“花婿にドタキャンされた花嫁”みたいな小春志泣き笑い。鬼の目にも涙。談春が嬉しそう。これでよかったのだ。

 翌31日、私のラジオへ神田伯山来て「新しい弟子2人見てもらおうと思いまして、青之丞と若之丞です。一番弟子の梅之丞は仕事へ行っちゃって」。こうして子供だと思ってた連中が芸の親になっていく。師弟。

※週刊ポスト2023年8月18・25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

お疲れのご様子の雅子さま(2025年、沖縄県那覇市。撮影/JMPA) 
雅子さまにささやかれる体調不安、沖縄訪問時にもお疲れの様子 愛子さまが“異変”を察知し、とっさに助け舟を出される場面も
女性セブン
不倫が報じられた錦織圭、妻の元モデル・観月あこ(時事通信フォト/Instagramより)
《結婚写真を残しながら》錦織圭の不倫報道、猛反対された元モデル妻「観月あこ」との“苦難の6年交際”
NEWSポストセブン
新キャストとして登場して存在感を放つ妻夫木聡(時事通信フォト)
『あんぱん』で朝ドラ初出演・妻夫木聡は今田美桜の“兄貴分” 宝くじCMから始まった絆、プライベートで食事も
週刊ポスト
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
「松井監督」が意外なほど早く実現する可能性が浮上
【長嶋茂雄さんとの約束が果たされる日】「巨人・松井秀喜監督」早期実現の可能性 渡邉恒雄氏逝去、背番号55が空席…整いつつある状況
週刊ポスト
発見場所となったのはJR大宮駅から2.5キロほど離れた場所に位置するマンション
「短髪の歌舞伎役者みたいな爽やかなイケメンで、優しくて…」知人が証言した頭蓋骨殺人・齋藤純容疑者の“意外な素顔”と一家を襲った“悲劇”《さいたま市》
NEWSポストセブン
6月15日のオリックス対巨人戦で始球式に登板した福森さん(撮影/加藤慶)
「病状は9回2アウトで後がないけど、最後に勝てばいい…」希少がんと戦う甲子園スターを絶望の底から救った「大阪桐蔭からの学び」《オリックス・森がお立ち台で涙》
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《浅田真央と村上佳菜子が断絶状態か》「ここまで色んな事があった」「人の悪口なんて絶対言わない」恒例の“誕生日ツーショット”が消えた日…インスタに残された意味深投稿
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン