日常が戻ってきた
徳島大学医学部運動機能外科学(整形外科)教授の西良浩一医師の話。
「内視鏡は傷跡がほとんど残らず、筋肉を痛めるリスクも少ない。なにより回復も早いです。私は全身麻酔ではなく局所麻酔で施術できる新たな手法を開発しました。これが広がれば、全身麻酔下の手術が困難だった高齢患者さんなどを安全に手術できるはずです」
元木氏も予後は順調だったと話す。
「6日ほど入院してリハビリをしたんだけど、手術の翌日にはもう右足の痛みがだいぶ引いていた。入院中はリハビリをして、歩行器で廊下を歩いたり、自転車を漕いだり。1日30分くらいかな。思ったよりリハビリも楽だった。
退院して3日後に近所を散歩してみたら痛みがないもんで、これは成功したなと思ったよ。もっと早く手術を受ければよかった」
退院から2週間後、術後の状態を確認するために国立国際医療研究センター病院を訪れ、再びMRIを撮ったところ、血塊は消えていたという。
「それからは1日4000~5000歩は歩くようにしています。出かける時は電車にもバスにも乗るし。喫茶店でひと休みしたりして、負担をかけないように歩いてる。内視鏡手術で日常が戻ってきた。
実はこの5月にハワイに行ったんだ。向こうでも足を鍛えようと思って海岸なんかを歩いてた。ところが最終日に絨毯にスリッパをひっかけて横倒しになって、テーブルに顔面をぶつけちゃったんだよ。少し腫れただけで骨折はせずにすんだけど。年寄りになると、ちょっとしたことで躓いて骨折するケースが多いから、気をつけないとね」
時に豪快に笑い飛ばしながら、闘病生活を振り返った元木氏。
「今回の手術は成功したんだけど、今度は脊柱管の中でヘルニアが悪さをしているようなんだ。また足腰に痛みが少し出てきたので、痛み止めをもらって飲んでいる。試練は続くけど、まぁ頑張っていきますよ。
でも私以上にあなたたち週刊誌も試練の時だ。こんな老人の病気話もいいけど、もう片方の手では恐れず大胆にスクープを追って、週刊ポストの本懐を遂げてくれよ」
最後に惜しみない週刊誌愛を語った元木氏は、しっかりとした足取りで帰路についた。
※週刊ポスト2023年8月18・25日号