ライフ

【竜王戦挑戦】“藤井聡太を泣かせた少年”伊藤匠七段「高校を1年で退学」藤井七冠を追いかけ続けた将棋人生

藤井聡太竜王に挑む伊藤匠七段(時事通信)

藤井聡太竜王に挑む伊藤匠七段(時事通信フォト)

 八冠全制覇へ向かって驀進する藤井聡太(21)の前に、かつての好敵手がその姿を何倍にも大きくして現れた。伊藤匠七段(20)。藤井と同学年で、2020年にプロ入りした若手棋士だ。藤井とは小学生時代から将棋大会で顔を合わせており、小学3年生の時には伊藤に負かされた藤井がその場で号泣し、「藤井を泣かせた少年」として知られていた。

 その伊藤が棋界最高峰の竜王戦で藤井への挑戦権を獲得したのだ。挑戦者を決める決勝トーナメントは上位クラスに在籍するほど有利で、下から2番目の5組で優勝した伊藤は挑戦までに7勝が必要だった。だが伊藤は並みいる強豪を連破し、一気呵成の7連勝を果たす。5組の優勝者が挑戦権を獲得したのは竜王戦史上、伊藤が初めてだった。

 10月6日から開幕する第36期竜王戦七番勝負は21歳の藤井と20歳の伊藤の顔合わせとなり、両対局者の年齢を足して41歳というのはタイトル戦史上、最年少の組み合わせとなる。さらに平成生まれの棋士同士がタイトル戦で戦うのはこれが初めて。また同学年ではあるが、藤井聡太が年下の棋士とタイトル戦で争うのもこれが初となる。

 初めて尽くしの七番勝負だが、タイトル戦で17回戦って無敗の藤井には死角がない。ポイントとなるのは、伊藤のパフォーマンスだ。

 先ほど「藤井を泣かせた少年」と書いた。ずっと藤井と互角に競ってきたようだが、実はそうではない。伊藤に「小学生時代から戦ってきた藤井さんとタイトル戦で激突するのはどういう気持ちですか?」と尋ねると、「戦ってきたのではなく、私が追いかけてきた感じですね」と冷静だった。

 棋士養成機関の奨励会に入ってからは藤井にずっと先を行かれ、伊藤が17歳でプロの道を歩み始めた時には、その4年前にプロ入りを果たした藤井はすでに棋聖と王位の二冠だった。伊藤も十分エリートなのだが、すべてが規格外の藤井の前では霞んでしまうのだ。

 当然、修業時代から藤井のことは強く意識していたが、まずは自分が強くならなければ始まらない。伊藤は進学校に入学していたが、高校1年生の1学期にあっさり退学し、将棋の道に懸けた。

「棋士になるという目標が明確にある中で、学校に行く時間は必要ないと思いました」とキッパリ語る。伊藤は寡黙なタイプだが、少ない言葉の中にも強い意志をしばしば感じさせる。

◆オフを一切作らない

 だが退路を断てばすぐに強くなれるわけではない。「高校をやめても結果が出ない、かなりつらい時期が長かった」と伊藤は述懐する。その時には、ネット中継で公式戦を見ていて藤井が勝利に近づくと、普通の感情ではいられないこともあったという。

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン