芸能

『VIVANT』で好演の阿部寛 後輩に「何言っているかわかったか?」と質問、自身の“滑舌”と向き合うひたむきさ

モデル時代の阿部(写真/朝日新聞社)

モデル時代の阿部寛(写真/朝日新聞社)

 超大作『VIVANT』(TBS系)に出演中の阿部寛(59)。1985年からモデルとしての活動を始め、ほどなくして映画『はいからさんが通る』で俳優デビューを果たす。さらにアイドルとしてアルバムをリリースし、CM出演数も増えていたが──。名優のこれまでを振り返る。【前後編の後編。前編から読む

「ほめられることはエネルギー」

 いい時代は長くは続かなかった。制作サイドから求められるのは似たような二枚目の役ばかり。実力が伴わないまま人気と知名度ばかりが先行し、悩んだ。この頃の心境を阿部はこう振り返っている。

〈見た目だけで判断されているという思いがあって、何か腑に落ちなかった。けれど自分のどこが悪いのか自分で全然分からない〉(北海道新聞1996年6月30日付)

 時が流れるとともに二枚目役も来なくなった。

 私生活でも不運に襲われた。バブルが崩壊し、投資先の不動産が暴落。億を超える借金を背負った。その頃のことを阿部はこう語っている。

〈これからどうやって生きていこうかと真剣に考えたら、自分には顔と名前しか残っていなかった〉(読売新聞2003年5月12日付)

 しばらくはパチンコをして糊口を凌ぐ生活が続いた──。

 真っ暗だった毎日にひと筋の光明が差し込んできたのは1993年。

 つかこうへい演出の舞台『熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』の出演が決まったのだ。演じることになっったのは、バイセクシャルの刑事役。これまで取り組んだことのない役どころだった。

 この頃、つかこうへいは阿部に対して、こんな声をかけていたという。

「いつまでも“阿部ちゃん”でいるつもりか」

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