『はいからさんが通る』で俳優デビューを果たした(前列は南野陽子。後列一番右が阿部)
迎えた本番、上半身裸の阿部が長身をよじり二枚目とはほど遠い演技を披露すると、会場は大きな笑いに包まれた。
この時の心境を阿部はこう振り返っている。
〈この作品で僕は初めて“演技で人からほめられる”という経験をしました。ほめられるって、本当にエネルギーになります。そしてそれは、自分の可能性を信じられる喜びにつながる〉(『スカイワード』2011年10月号)
それからオファーが殺到し、1994年には2本の作品で日本映画プロフェッショナル大賞・特別賞を受賞した。
同年に『大江戸風雲伝』(NHK)で7年ぶりに共演した南野陽子(56)は阿部の変化を肌で感じたという。
「“今なら『はいからさんが通る』の時とは違うお芝居ができると思います”とおっしゃっていました」
誰よりも早く「発声練習」
そして2000年、仲間由紀恵(43)と共演して大ヒットした『トリック』(テレビ朝日系)で再ブレークし、人気俳優の地位を不動のものにすると、『ドラゴン桜』(2005年、TBS系)、『結婚できない男』(2006年、フジテレビ系)と主役級を次々に演じた。
『結婚できない男』で共演した俳優の不破万作(77)が語る。
「日本人離れした風貌で、身長差が40cmほどあるので、僕はいつも上を向いて芝居をしていました。撮影終了時にはお酒好きの僕にとっておきの洋酒をプレゼントしてくれるような気遣いの人です。善人役も悪人役も演じることができ、ハリウッドでも引けを取らない名優だと思います」
その頃から私生活も上昇気流に乗り始めた。2007年には15歳年下の一般女性との結婚を発表。借金も長い時間をかけてすべて返済していった──。