無事、国連に沖縄県の声を届けられ安堵した町田さんたち

無事、国連に沖縄県の声を届けられ安堵した町田さんたち

 PFAS汚染の問題を報じるウェブサイト「ミリタリーポイズンズ」の米国人ディレクター、パット・エルダーさんはこう警鐘を鳴らす。

「泡消火剤は小さじ1杯の泡であっても、中規模都市の飲用貯水池を充分汚染する威力があると考えられています。それが大量に漏出したとすれば、非常に重大な問題です」

 アメリカ国内の基地でも同様の汚染が社会問題化し、疑いがあるとされる施設は701か所にのぼる。本国では水質浄化や土壌除染を進めているが、日本の米軍基地ではそのような動きはみられない。

「障壁になっているのは日米安保条約の締結とともに発効された日米地位協定。沖縄県は2015年に締結された環境補足協定に基づく立ち入り調査を求めていますが、米軍側は調査が認められる条件の『環境に影響を及ぼす事項が現に発生した場合』に該当しないという認識を崩しておらず、いまだに実現していないのです」(安里さん)

環境省は住民の血液検査に消極的

 問題は沖縄だけではない。豊富な地下水を水道水として利用している東京西部・多摩地区の住民からも高い血中濃度のPFASが検出されており、米軍横田基地の影響であると推測されている。

「実際に高い数値が出た国分寺市に住む70代の女性は、スポーツが好きで食生活にも配慮し、体形もスリムなのに高脂血症だと診断されていました。医師も『原因がわからない』と首をひねるばかりでしたが、PFASの問題が発覚して納得がいったそうです」(現地住民)

 因果関係は確認できていないが、PFASは高脂血症を引き起こす原因物質である可能性が高いと考えられている。

 今年6月、市民団体が住民の不安に応える形で立川市の病院を会場に血液検査を実施。当日は横田基地から離れた町田市の住民が多かったが、受検者の表情はみな硬く、口々に「水にそんなものが含まれているとは考えたこともなかった」と不安げな表情だった。高校生の娘を連れて採血に訪れた40代の母親が言う。

「娘は検査なんてイヤだと言うのですが、彼女には就職や結婚、出産など大きなライフイベントが控えています。何かあってからでは遅いと思い、無理やり連れてきました」


今年6月、母親に連れられ、立川市の病院で行われた血液検査に参加した女子高校生

今年6月、母親に連れられ、立川市の病院で行われた血液検査に参加した女子高校生

 それから3か月経った9月、「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」の共同代表で横田基地に詳しい高橋美枝子さんが、フェンスの外から現場を案内してくれた。

「横田基地からのPFASを含む泡消火剤の漏出はこれまで7件確認されています。2012年11月には基地内消防署のタンクから全量が漏出、3030リットルにも及んでいます。基地の東側では航空火災の消火訓練も長年行われてきた。当然使われるのは泡消火剤で、大気に飛び散って畑に降り注いだり、土壌に染み込んで地下水に流れ込みました」

 多摩地区では現況を重く見た有志の医師たちによる血液検査後のフォロー体制もある。立川相互ふれあいクリニックで「PFAS相談外来」を担当する医師の青木克明さんが話す。

「相談外来にはこれまで60人ほどが受診されました。ガイドラインに沿って腎臓がん、精巣がん、甲状腺疾患、脂質異常症、潰瘍性大腸炎などに重点を置いた診察をしています。いまのところ腎臓がんが見つかった人はいませんが、受診者には脂質異常症のかたが多いように思われます」

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