効きすぎて脱水症状に
残暑のなか、特に注意したいのが降圧剤だ。種類の多い降圧剤のうち、谷本医師はとりわけループ利尿薬について注意を促す。
「汗をかくことで水分量が減り血圧が下がりやすくなる夏場は、いつもと同じ量の降圧剤を服用すると、血圧が下がりすぎてふらつきや立ちくらみなどのリスクが生じます」
同様に、糖尿病治療薬ではSGLT2阻害薬の副作用にも注意したい。
「尿に糖を排出する薬で、低血糖には比較的なりにくいです。ただし、効果は高いものの、SGLT2阻害薬は糖分を含む尿量が増えるため、脱水や尿路感染に気を付けなければなりません」
心筋梗塞や脳梗塞などの既往歴がある患者が再発予防のために使うことの多い抗血栓薬も、75歳以上はリスクが高まる。
「血液がサラサラになりすぎることで、腸などから出血するリスクがあります」
谷本医師自身が「飲みたくない」というのがベンゾジアゼピン系の睡眠薬だ。
「不眠症の改善などのため昔から使われる薬ですが、実は依存性が高く、やめられないという高齢者が今でも多くいます。ですが、せん妄や転倒・骨折などの副作用があるため、それが原因で寝たきりになるリスクもある。患者さんには少しずつ服用する量を減らしたり、依存性の低い新薬に変えることを推奨しています」
薬には必ずリスクとベネフィットがある。体調や年齢に応じて、薬の服用についても慎重に検討したい。
※週刊ポスト2023年9月29日号