不正疑惑が指摘されている大津欣也理事長
この主張について、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑・京都大学特別教授に聞いた。
「コントロール群は、個々の実験に対して置く必要があるので、異なる実験に共通のコントロール群は考えられません。従って、コントロール群であっても同じ画像の使い回しは不適切です。一般論ですが、論文不正はどのような立場であっても、著者すべてに責任があると考えます」
こうした疑惑は他の国循幹部にも浮上している。国循の創薬オミックス解析センター長で理事長特任補佐の山口修氏は、パブピアで14本の「論文不正」疑いが指摘された。このうち13本の論文に大津理事長が共著者として名を連ねている。副院長の中岡良和氏が指摘を受けたのは2本。同じく副院長で弁膜症センター長の山本一博氏は、8本の研究論文で指摘を受けた。
大津理事長に関しては、新たな不正の指摘が追加され、合計13本。今年3月末で辞職した前副所長の鈴木憲氏(現ロンドン大教授)は15本となった。不正の疑いが指摘された研究論文は、確認できた限りで総計41本(重複論文除く)。これだけ大量の不正疑惑が指摘されるのは、前代未聞である。
新たな不正の指摘について、国循の広報担当者は「7月下旬以降に事実を把握した」と明らかにした。パブピアで指摘が相次いだことに関しては「発表された論文について研究者が意見交換する場所であると認識しておりますので、当センターとしての対応の必要性については個別に判断した上で、適切に対応してまいります」と述べた。
共通点は“阪大出身”
パブピアで「論文不正」が指摘された国循の医師6人に共通するのは、“大阪大・循環器内科医局”出身という点である。しかも、指摘を受けた論文の大半は、国循に異動する前の大阪大時代に行なわれた研究だった。
副院長の山本氏が指摘を受けた8本の論文のうち7本に、大阪大・循環器内科学科長の坂田泰史教授の名があった。研究不正に詳しい榎木英介医師はこう指摘する。
「同じ実験画像を加工して使い回す手法は共通しているので、大阪大・循環器内科で日常的だった可能性があります。大阪大は上下関係が厳しく、結束力が強い。研究不正に異議を唱えることを許されない空気があったのかもしれません」