思い出を語る残間さん(左)とクミコ(右)。10月にコンサートを開催する
百恵さんが引退直前に発表した『蒼い時』は400万部を超える大ベストセラーとなった。金子さんと百恵さんの運命的なめぐりあわせが、2人のアーティストの人生に大きな影響を与えたといえるだろう。金子さんも一躍時の人となり、前述のように銀巴里出身の歌手として初めて紅白に出場し、地方でもコンサートを行うようになった。
「どこへ行っても会場はお客さんで埋まっていました。ただ、金子さんはどんなに注目を浴びても、常に淡々として、生活が変わるようなこともなかったですね」(残間さん)
クミコは銀巴里の忘年会で、ひとりでポツンとたたずむ金子さんの姿を記憶している。
「新米の私が大御所に話しかけることもできず、ミーハー心で遠巻きに見ていたんです。同年代のかたと親しくするような雰囲気もなかったのですが、バンドやスタッフのことは大切にされていましたね。普通では考えられないことですが、ツアーではメンバー全員がグリーン車に乗っていましたから」(クミコ)
金子さんが最後にリサイタルを行ったのは2010年頃。「ハイヒールが履けなくなったから」という言葉を残して舞台を去った。百恵さんと同様その後は一度も表に出ていない。
「昭和は金子さんのような大人の女性が颯爽と登場し、シャンソンが大手を振って歩いていた輝かしい時代でした。いまの時代にシャンソンが受け入れられる余地はそれほどないかもしれません。それでも、年を重ねるほどに味わい深くなる音楽がそうやすやすと消えるはずがないんです。心細いいまの時代こそ、あの頃の熱を再び胸にともしたいと願っています」(クミコ)
昭和を彩った女性たちの思いは、現代にも確実に歌い継がれている。
※女性セブン2023年10月12・19日号