芸能

【要潤が熱演】NHKの名作『タイムスクープハンター』演出家が明かした「なぜフェイクドキュメンタリーの手法を選んだか」【短期連載・てれびのスキマ「『フェイク』のつくりかた」】

『タイムスクープハンター』で一躍ブレークを果たした俳優の要潤 (C)NHK/P.I.C.S.

『タイムスクープハンター』で一躍ブレークを果たした俳優の要潤 (C)NHK/P.I.C.S.

 YouTubeやSNS上でフェイクドキュメンタリーのブームが巻き起こっている中で、実はそのブームを先取るように、おおよそ2000年代から実験的にフェイクドキュメンタリー的演出のテレビ番組が放送されてきた経緯がある。

 なかでもテレビを通じて広く世間に受け入れられたフェイクドキュメンタリー番組のひとつに、2009年放送のドラマ『タイムスクープハンター』が挙げられる。脚本・演出を務めた中尾浩之氏に、フェイクドキュメンタリーというジャンルが浸透しているとはいえなかった当時にその演出方法を選んだ理由を訊いた。

 聞き手は、『1989年のテレビっ子』『芸能界誕生』などの著書があるてれびのスキマ氏。現在、ネットで話題の「フェイクドキュメンタリー」に意欲的に取り組んできたテレビ番組の制作者にインタビューを行なう短期シリーズの第2回【前後編の後編。文中一部敬称略】。

 * * *

タイムスクープハンターの着想は「時代劇」と「湾岸戦争」

 10月4日から新作アニメ『ブルバスター』がTOKYO MXなどで放送される。その原作を務めたのは中尾浩之。中尾といえば、『タイムスクープハンター』(NHK)を手がけたことでも有名だ。2009年から要潤主演で始まった作品で、シーズン6までシリーズを重ね、映画化もされたテレビ史に残る名作ドラマだ。しかも、この作品は、未来から来た「時空ジャーナリスト」沢嶋雄一(要潤)が過去の出来事を密着取材したドキュメンタリーという体裁のフェイクドキュメンタリー。その特異な設定がどのように生まれたのか、すべての回の監督・脚本を務めた中尾は次のように振り返る。

「僕、歴史の授業があまり得意じゃなくて。眠くなっちゃうじゃないですか(笑)でも教科書で合戦の絵とかを見て、『ブルバスター』と考え方は同じなんですけど、端っこに描かれている足軽とかにも、この人の人生があると思ったんですよ。この人は朝どうやってここに来て、どういう飯を食ったのか。家族もいるはずだ。そう思うとドラマが見えてくる。

 それと時代劇を見ると、合戦になると殺し合いのはずなのに途端にファンタジーになっちゃうんですよね。そこに違和感がずっとあったんです。けど、企画の着想はそこではなくて、大学時代に起こった湾岸戦争でした。この頃、ビデオジャーナリストが台頭してきて、小型のカメラを持って戦場にどんどん行って映像が入ってきた。この感じを時代劇でやったら、これまでの時代劇のアンチテーゼになるようなリアルなものが撮れるんじゃないかと考えました」

憧れの映画を模倣して自主映画を撮る学生時代

 映画好きだった中尾は小学生の頃から8ミリカメラを回し、中学の頃には早くも自主映画を撮り始めたという。

「『フライングハイ』というザッカー兄弟が撮った映画にハマって、ドタバタのスパイものを中学の時に友達と作ったんだけど、完成はしなかったですね。友達とやってるから途中で笑っちゃうじゃないですか。それを上映してゲラゲラ笑うみたいな。衝撃的な作品と出会うと1週間くらいはずっと考えて、影響を受けてましたね。

『家族ゲーム』で有名な森田芳光さんには、『ときめきに死す』という映画があって、僕はすごい好きなんですよ。高校のときに出会ってそれで頭がいっぱいになって結構引きずりました。バンドをやっている人がコピーバンドやったりするように、模倣して自主映画を撮っていました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン