羽生さんの行動原理で昔から変わっていないのは、業界の先輩や目上の人間に対して強い尊敬の念を持っているということだと感じる。
棋士ではない僕に対しても、毎年、羽生家からお中元とお歳暮が送られてくる。会って話をすれば、こちらの話を本当によく聞いてくれる。将棋界での実績では大山先生も羽生さんと遜色ないが、「アイ・アム・ア・ロー」の大山さんが先輩棋士の意見に丁寧に耳を傾けていたかといえば、そんなことはなかった。
40年という時の間、僕は羽生さんから学ぶことだらけだった。撮影を通じて羽生さんという棋士の内面を感じ取ることができた。羽生さんは冒険者、パイオニアである。勇気を出して、踏み込んでいく。そこに羽生さんの素晴らしさがあると思っている。
※弦巻勝『将棋カメラマン 大山康晴から藤井聡太まで「名棋士の素顔」』より一部抜粋・再構成
【プロフィール】
弦巻勝(つるまき・まさる)/1949年、東京都生まれ。日本写真専門学校を卒業後、総合週刊誌のカメラマンに。1970年代から将棋界の撮影を始め、『近代将棋』『将棋世界』など将棋専門誌の撮影を担当する。大山康晴、升田幸三の時代から中原誠、米長邦雄、谷川浩司、羽生善治、そして藤井聡太まで、半世紀にわたってスター棋士たちを撮影した。“閉鎖的”だった将棋界の奥深くに入り込み、多くの棋士たちと交流。対局風景だけでなく、棋士たちのプライベートな素顔を写真に収めてきた。日本写真家協会会員。
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