そうしないと気が済まない人もいるでしょう。ただ、怒りの気持ちを積極的に焚きつけることで、本当にスッキリできるかどうかは疑問です。思いっ切りふくらんだマイナスの感情は、簡単にはしぼんでくれません。道端で頭に鳥の糞を落とされた人が、大声で叫びながら鳥を追いかけたら、転んで大ケガしたみたいな図式が思い浮かびます。もちろん残念なライブも鳥の糞も、どう対処するかは個人の自由なんですけど。
マイナスを最小限に抑えるには、どんな対処が有効なのか。どんなに文句を言っても腹を立てても、自分がそのライブに行った事実は変えようがありません。ダメージを消すために有効なのは、期待外れな内容だったことを楽しむこと。「なかなかできない貴重な体験ができた」「しばらく話の種になる」「〇〇の別の一面が見られた」と強引に意味を見出しつつ、ある意味“引き”が強い自分を笑ってしまいましょう。
その上で、アーティストを非難するのではなく、「どこか悪いんじゃないか」「トラブルを抱えているんじゃないか」と心配したり、「長丁場のツアーで疲れているのかもしれない」と同情したりすれば、ちょっといい気持ちになれます。アーティストと距離が縮まったように感じられたり、ファンとしての階段をひとつ上った気がしたりもするでしょう。
鳥の糞にしても、頭の上に落ちてきた事実は変えようがありません。しかし、めったにない出来事を「幸運の兆し」と捉えたり、苦笑いしながら「あの鳥、いいコントロールしてるな」と感心したりするのも一興。けっして愉快ではない出来事も、ひと工夫することで小さな「幸せ」につなげることができます。
「期待外れ」をプラスにするコツを会得すれば、あるいはプラスする方法を反射的に模索するスタンスを身につければ、ライブにせよ飲食店にせよ旅行先にせよ鳥の糞にせよ、どんな目に遭っても怖くありません。いっぽうで「期待外れ」だったガッカリ感をストレートに受け止める発想しかないと、怒りの感情に振り回されたり、「お金を払った客」という立場をことさら主張してしまったりする羽目になります。
誰しもこれからの人生の中で、たくさんの「期待外れ」に遭遇するでしょう。全力でプラスの出来事に変換して、どうにか「幸せ」につなげたいものです。本当の意味で強く生きるというのは、そういうことではないでしょうか。ぶつけてもいい相手に怒りをぶつけることを「カッコイイ」と考える方は、引き続きイライラやムカムカと縁が深めの日々をお過ごしください。好みの問題にあれこれ申し上げるのは、大きなお世話ですね。