芸能

【藤井聡太八冠・天才の原点】姉弟子・室田伊緒女流二段が語るその強さ「師匠に対しても違うと言える」、家庭環境も一因

初タイトルとなる棋聖を獲得した後に師匠の杉本昌隆八段(左)と姉弟子の室田伊緒女流二段(右)とのスリーショット。この年、コロナ禍で対局が自粛される期間が続いたが、藤井はその間に研究に没頭することができたという。自粛明けの対局で蓄えた力を爆発させた

初タイトルとなる棋聖を獲得した後に師匠の杉本昌隆八段(左)と姉弟子の室田伊緒女流二段(右)とのスリーショット。この年、コロナ禍で対局が自粛される期間が続いたが、藤井はその間に研究に没頭することができたという。自粛明けの対局で蓄えた力を爆発させた

 厳しい競争を勝ち抜き、プロ棋士になれるのは原則として年間で4人のみ。現役の棋士は170人ほどしかいない。「天才集団」と呼ばれる彼らの中で、藤井聡太はなぜ頂点に立てたのか。藤井と杉本昌隆師匠の対談取材をしたことがある、野澤亘伸氏がルーツを辿った。【全3回の第2回。第1回から読む】

 * * *
「将棋が好きということが才能であるなら、聡太くんは天才ということになります。その気持ちが強いので努力を努力と思っていないんです」と話す室田伊緒女流二段(34)は藤井聡太八冠と同じ杉本昌隆八段門下で、姉弟子の立場だ。藤井のことは小学2年生のときから知っている。

「普通はプロの先生がこの手がよいと言ったら、子供はみんな納得してしまいます。でも聡太くんは違う考えを師匠に対してもはっきりと言う子でした」(室田さん・以下同)

 藤井の家庭環境も強さの一因だと分析する。

「子供は興味を持ったものに、どんどんのめり込んでいく。でもやりなさいと言われると嫌になってしまう。藤井家は本人が関心を持ったものに対して口は出さずに環境づくりをしてあげる。大会に連れて行ってあげるとか、サポートだけ。それがいちばん大事なことかなと思います。

 聡太くんのお母さんは、負けて泣いているときでも無理に泣き止ませることはせず、優しく見守っていたと聞きます。実は彼と初めて指したときは、私が勝ったんです。『お腹痛い。コーラ飲みすぎた』って言い訳していて、めちゃくちゃかわいかったです(笑い)」

 藤井は、2016年9月に史上最年少の14才2か月でプロ入りを果たした。その後、負け知らずでデビュー以来29連勝。室田さんは藤井のメンタルの強さを特に感じていた。

「あれだけの報道陣に囲まれたら震える人が大半だと思う。その中で結果を出しているのがすごい。子供の頃はわからなかったですが、プロになってからは心技体が揃っている。持って生まれたものかと思いますが、将棋に集中していて周りを気にせずに力を出せるのかもしれません」

 中学生棋士としてデビューした藤井にとって、高校進学は大きな岐路だった。昭和の時代には棋士はほとんどが中卒だった。結果として両親の希望もあり、藤井は名古屋大学教育学部附属高等学校に進学する。その後、タイトルを獲得して高3で退学した。

「高校は行ってよかったと思います。将棋界だけでなく同世代の人たちとつきあうのは、そのときしか経験できない大切なことですから」

(第3回へ続く。第1回から読む)

取材・文/野澤亘伸 写真/野澤亘伸、藤井家提供

※女性セブン2023年11月16日号

中高一貫校の名古屋大学教育学部附属中学を、母親と話し合って受験した。小学6年生の⓬月に受験を決意し、進学塾には通わず、翌年の3月に合格

中高一貫校の名古屋大学教育学部附属中学を、母親と話し合って受験した。小学6年生の12月に受験を決意し、進学塾には通わず、翌年の3月に合格

デビューからの29連勝達成時の感想戦。将棋連盟の特別対局室には大勢の報道陣が押し寄せた。対戦相手は増田康宏四段(現七段)。当時将棋界で最も若い2人の対戦だった

デビューからの29連勝達成時の感想戦。将棋連盟の特別対局室には大勢の報道陣が押し寄せた。対戦相手は増田康宏四段(現七段)。当時将棋界で最も若い2人の対戦だった

関連記事

トピックス

現地取材でわかった容疑者の素顔とは──(勤務先ホームページ/共同通信)
【伊万里市強盗殺人事件】同僚が証言するダム・ズイ・カン容疑者の素顔「無口でかなり大人しく、勤務態度はマジメ」「勤務外では釣りや家庭菜園の活動も」
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《巨人V9の真実》400勝投手・金田正一氏が語っていた「長嶋茂雄のすごいところ」 国鉄から移籍当初は「体の硬さ」に驚くも、トレーニングもケアも「やり始めたら半端じゃない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン
フランクリン・D・ルーズベルト元大統領(写真中央)
【佐藤優氏×片山杜秀氏・知の巨人対談「昭和100年史」】戦後の日米関係を形作った「占領軍による統治」と「安保闘争」を振り返る
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
江夏豊氏(右)と工藤公康氏のサウスポー師弟対談(撮影/藤岡雅樹)
《サウスポー師弟対談》江夏豊氏×工藤公康氏「坊やと初めて会ったのはいつやった?」「『坊や』と呼ぶのは江夏さんだけですよ」…現役時代のキャンプでは工藤氏が“起床係”を担当
週刊ポスト
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン