ライフ

今すぐアップデートしたい“薬に関する古い常識”「子供にステロイドはNG」「睡眠薬を大量にのむと命にかかわる」は間違い

(写真/PIXTA)

薬に関する常識は変化している(写真/PIXTA)

 体調を崩した時に服用する薬だが、特定の薬に対して古い知識に縛られ、極端な忌避意識を抱いている人もいるだろう。たとえば、「子供にはステロイドを使ってはいけない」というのはまさに「昭和の知識」の典型だ。新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんが言う。

「ステロイドは体内の副腎でもつくられる物質で、それ自体に危険性はありません。かつては“ステロイド軟膏を塗ると『ステロイドホルモン』が皮膚から浸透して強い副作用が出る”などと言われたことがありましたが、健康な皮膚は異物を吸収しませんし、アトピーなどで荒れていても、浸透量はごくわずか。副作用の心配は、ほぼありません。

 皮膚科の専門医たちも“肌の弱い子供であっても、炎症の治療にステロイドは欠かせない”と言います。ただしステロイド軟膏は種類が多いため、自己判断で使うのは避けてください」(岡田さん)

 ステロイドのリスクがあるとすれば、軟膏ではなくのみ薬だと銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんは言う。

「のみ続けると体内でつくられるステロイド量が減り、中止したときにショック症状が出ることがあります。とはいえ、のみ薬のステロイドは基本的には特殊な炎症疾患などでない限り処方されないので、気にしすぎる必要はないでしょう」(長澤さん)

「睡眠薬を大量にのむと命にかかわる」という知識も過去の話だ。

「確かに1950年代半ばまで処方されていた『バルビツール酸系睡眠薬』は大量服用すれば死に至ることがありますが、いまはほとんどの睡眠薬が『ベンゾジアゼピン系睡眠薬』に置き換わっているので、処方された睡眠薬を大量服用しても命を落とすケースはまずありません。睡眠薬を服用すると認知症のリスクが高くなるという説も、現在は否定されています」(岡田さん・以下同)

 ただし薬である以上、副作用は当然、存在する。現在、睡眠薬の服用で懸念されるリスクは「転倒とそれに伴う骨折」だ。

「日中も薬の効果が残ってしまうことで、ふらつきや手足に力が入らなくなるなどの副作用が出て転びやすくなる。また漫然と長期にわたって服用を続けると死亡率が高くなるともいわれているため、不眠の治療はできる限り薬だけに頼らず、生活習慣を見直すことが必要です」

 薬ののみすぎがリスクになる一方で、薬に頼らずがまんし続けるのもおすすめできない。特に頭痛や生理痛などは慢性的なもののため痛みに耐えて乗り切ろうとする人も多いが、長澤さんは「痛みには逆らわずに薬をのんだ方がいい」と話す。

「がまんすればするほど、痛み物質のプロスタグランジンが増えて痛みがひどくなり、薬も効きにくくなります」(長澤さん)

 かといって「早すぎる服用」もやめるべきだ。薬剤師の三上彰貴子さんは言う。

「“今日は雨だから、きっと頭が痛くなる”と朝から痛み止めをのんだり“そろそろ生理痛がくるはず”と、まったく痛みを感じていないときに薬をのむことは、市販薬では推奨されていません。“痛くなってきた気がする”というギリギリの段階でのむといいでしょう。

 花粉症の薬も同様に、症状が少し出始めた早めの段階でのむのがベスト。ただし処方薬の一部は予防のために早めにのむように医師に言われる場合があるので、その際は指示に従ってください」(三上さん)

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト