公演を終え、共演する巳之助(右)と帰路につく右近(11月上旬)
芸能関係者が続ける。
「約1か月続く歌舞伎公演で、興行元は、演奏者1人あたり50万~100万円の出演料を予算として計上しているそうです。
全公演に出演する歌舞伎役者とは異なり、一般的に、演奏者は1日おきだったり、公演を前後半に分けて2人の演奏者で半分ずつ出演したりします。その出演日数をもとに出演料が個人に分配されるのですが、頻繁に出演しているにもかかわらず、月収にして10万円台しか受け取れない演奏者が、清元連中には何人もいるそうです。
これは、ほかの演奏者の一派と比べて著しく低い水準だといいます。そればかりか、歌舞伎チャンネルや衛星劇場の番組などの収録に出演した際の出演料も、支払われていないそうです」
不満は大きく膨れあがり、この7月以降、一派を揺るがす事件が起きていた。
「清元連中のお弟子さんの一部が、興行主である松竹サイドに“状況を改善してほしい”と訴えてきたんです。実際にお弟子さんがもらっていた額は、松竹側の人間が驚くほど低かったようで……。そこで松竹側は、一派の出演料をまとめて家元に支払うのではなく、お弟子さん個人に出演料を支払う形に変更することを検討したそうです」(別の芸能関係者)
しかし、現在に至っても「個人払い」には切り替わっていないという。
「どうやら、家元が拒否したようなのです。興行サイドとしては、演奏を依頼している立場なので、家元には強く出られないところもある。しかし、お弟子さんたちも引くわけにはいかず、10月の名古屋・御園座での公演直前には、“待遇改善をしないなら、もう出演しない!”と声を上げて、集団ボイコット騒動にまで発展。舞台の幕が上がらない危機に陥ったといいます」(前出・別の芸能関係者)
その騒動が起きたのが、前述した片岡仁左衛門と坂東玉三郎の出演舞台だった。
「玉三郎さんは敏感で、清元連中の内部が揉めているのを感じ取って、興行側に掛け合ったそうです。公演を中止にするわけにもいかず、“今回だけ個人払いにする”と話が進んだので、ボイコットは鎮静化しました。
ただ本来、公演初日から数日以内に振り込まれる出演料が、御園座での公演では支払いが大幅に遅れ、公演期間中、“タダ働きじゃないか”と不安に思っていたお弟子さんは多かったようです」(前出・別の芸能関係者)