通院にはAさんが付き添っていた(8月下旬)

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「未成年者への性加害」疑惑の報道も

 自殺幇助の罪については裁判で事情が明らかにされ、量刑も確定した。一区切りだ。それとはまったく別の深刻な問題として、猿之助の「パワハラ・セクハラ」疑惑は何も明らかにされないまま、この半年間、完全に放置されてきた。猿之助本人の口からは何も語られず、歌舞伎界も一切それに触れず、メディアさえも黙殺してきた。

 本誌『女性セブン』は2023年5月18日発売号で、猿之助によるセクハラ・パワハラ疑惑を報じた。一門の弟子筋の歌舞伎役者や俳優、裏方スタッフに対し、手を握ったりキスを迫ったりしたほか、一緒に風呂に入るよう求めたりしていた。中には、「ベッドに誘われ下半身を好き勝手に弄ばれた」といった、猿之助による「性加害」の告発もあった。

 そして、複数の証言者の言葉で一致していたのは、「公演の演出やキャスティングなどに強い影響力を持っているため、外されるのが怖くて断れない」という、猿之助が澤瀉屋一門のトップに立っていることに起因するパワハラの存在だった。さらに、『週刊新潮』(6月8日発売号)は、猿之助による「未成年者への性加害」疑惑を報じた。

 あらゆるハラスメントは見逃されるべきではなく、きちんと検証され“清算”されなければならない──それが昨今の社会のあるべきスタンスであり、実際にこの半年でいくつもの事例があった。

 たとえば故ジャニー喜多川氏による性加害問題。外部専門家の「再発防止特別チーム」は、ジャニー氏による性加害が70年以上前から繰り返されていたと指摘した。

 すでに、ジャニー氏の名前は各関連会社やグループ名からも消される方針が打ち出されている。スポンサー企業なども厳しい対応を迫り、所属タレントの中には早々に独立を発表する人間が出るなど、大きな社会的制裁を受けている。また、被害者には「法を超えた補償」をすることを明らかにしており、客観的証拠がなかったり消滅時効が成立したりしていても、補償の対象となる方向だ。

 宝塚歌劇団では、9月30日に現役のタカラジェンヌが自死したことをきっかけに、劇団内にある行きすぎた上下関係や指導、いじめの実態が浮き彫りになりつつある。当初、歌劇団は、自死したタカラジェンヌと先輩劇団員の間で起きた、ヘアアイロンを額に押し付けたとされる過去の“やけど騒動”を「故意ではなかった」とした。

 だが、11月10日、亡くなったタカラジェンヌの遺族の代理人弁護士が会見を開き、上級生からのパワハラや、常軌を逸した長時間労働の実態を明かした。前述した“やけど騒動”についての週刊誌報道も、歌劇団は「事実無根」との声明を一方的に発表したという。意図的に事態を矮小化したり隠そうとしたりすることが、事態の悪化を招くのは当然だったのだろう。歌劇団は、自死直後から第三者チームによるタカラジェンヌたちへのヒアリングを始め、11月14日に結果を公表した。

 翻って猿之助のセクハラ・パワハラ疑惑である。歌舞伎界のハラスメント問題は、旧ジャニーズ事務所や宝塚歌劇団と根本は変わらない。いずれも「芸能」という閉鎖的な環境の中で起こった出来事で、絶対的な上下関係が存在するため、当事者や関係者が声をあげにくい状況が続いてきた。組織の中で、何度訴えても、背景にあるパワーバランスによって声はかき消され、被害者たちの声に耳を傾けることなく問題は隠蔽されてきた。

 だが、旧ジャニーズ事務所も宝塚歌劇団も、「エンターテインメント」の名の下に、被害者がいる現実から目を背けてきたツケが回ってきたといえる。後ろ向きな理由だったとしても、社会の変容に合わせて、まさに変化のときを迎えている。ところが、歌舞伎界だけはことここにいたっても、“見て見ぬフリ”を続け、性加害やパワハラを完全無視しようとしている。

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