5月22日の発売から半年で13刷のベストセラーとなっている『ザイム真理教──それは信者8000万人の巨大カルト』(フォレスト出版)。「財務省は、宗教を通り越して、カルト教団化している」と喝破した著者で経済アナリストの森永卓郎氏が、「ザイム真理教」に日本経済を破壊させないために、いま改めて提言する──。
* * *
世界の先進国で30年間経済成長していないのは日本だけ。なぜそんな異常なことが起きたのか。
最大の原因は財務省の非科学的な「財政均衡主義」だと思っています。
財務省はこの間、「日本の財政は破綻状態だ」と宣伝し、「このまま国の借金が増えて財政赤字が拡大すれば国債が暴落、為替レートも暴落してハイパーインフレになる」と国民を脅してきた。そのうえで「そんな恐慌が起きないように増税が必要だ」と言って、全く必要のない増税を繰り返した。これが財政均衡主義の考え方です。
その結果、1980年代には3割ちょっとだった国民負担率【注:国民全体の所得に占める税金や社会保険料の負担の割合。財務省は2022年度の国民負担率(実績見込み)は47.5%、2023年度は46.8%の見通しと公表した】はいまや約5割まで上がった。
日本経済が成長できなくなった最大の理由は、財政均衡主義に基づいた急激な増税と社会保険料アップで国民の手取り収入が減ってしまったからです。使えるお金が減れば、消費が落ち込み、企業の売上げが減るという悪循環が続いて成長できなくなった。
メディアコントロール
しかし、この財政均衡主義は真っ赤な嘘だったことが安倍政権末期に明らかになる。政府は2020年度に新型コロナ対策で約108兆円もの国債を発行し、基礎的財政収支は約80兆円の赤字だった。1年でこれだけの大借金をしたのに、ハイパーインフレなど起きなかったからです。
実は、反財務省だった安倍政権はコロナ前から、大量に発行した国債を金融機関に買わせ、それをさらに日銀に買い取らせるということをやっていた。そうすれば、ある程度財政赤字を拡大させ続けても大丈夫、増税の必要はないことが実証されたわけですが、財務省はそのことをひた隠しにして大手メディアも一切報じなかった。
そしていまなお、財務省は「国の借金は赤ちゃんを含めて国民1人あたり1000万円もある」と財政均衡主義、増税必要論を唱え、国民の半数くらいはそれを信じている。
それというのも、財務省のメディアコントロールは半端じゃない。新聞社の論説委員を集めて、社説の品評会をやるんです。増税路線に賛成した論説クラスは政府の審議会の委員に起用して、増税に貢献すれば“天下り先”まで紹介してくれる。
財務官僚は政治家はもちろん、有識者と呼ばれるテレビのコメンテーターのもとにも足繁く通ってマインドコントロールしていく。そんなテレビや新聞の論調を読めば、国民が信じてしまうのは無理もない。