北朝鮮では建国記念日などに催される重要な国家行事において、参加者全員が歌う「儀式歌」がある。これまでは金正恩朝鮮労働党総書記の父、金正日氏を讃える「金正日将軍の歌」が主に歌われてきたが、11月に入ってからは、儀式歌が金正恩氏を賛美する「金正恩将軍の歌」に変わったことが明らかになった。
2011年末に金正日氏が死去し、金正恩氏が3代目の最高指導者の座についてからすでに約12年が経っており、金正恩氏個人の権威確立を図る狙いがあるとみられる。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
朝鮮労働党中央宣伝部は11月4日の地方人民代表大会の代議員選挙を皮切りに、すべての党・政府機関や朝鮮人民軍、企業、学校などに対して、国家行事の儀式歌を変更し、「金正恩将軍の歌」を歌うよう指示した。
この歌は2015年7月27日の「戦勝記念日」(朝鮮戦争の休戦協定が締結された日)の国家行事において、朝鮮人民軍合唱団によって初めて披露された。今年の11月から、公式行事の儀式歌として指定された。
「金正恩将軍の歌」は文字通り、最高指導者としての金正恩氏をたたえるための歌。3番の歌詞の中には「将軍はまばゆい世紀の太陽」「将軍は燦然と輝く勝利の旗印」「白頭山大国の三千里に明るい未来を繰り広げるその名も偉大な金正恩将軍」など、次々と金正恩氏を賛美するフレーズが登場する。
ちなみに1番目では「将軍は強大な朝鮮の精神」、2番目では「将軍は千万の聡明な知恵」などのフレーズが使われている。
北朝鮮の儀式歌は、祖父の金日成時代には「金日成将軍の歌」が歌われ、金日成氏死後3年目に「金正日将軍の歌」となった。
それに比べると、「金正恩将軍の歌」は金正日氏の死後12年目とかなりの年数を経て、ようやく儀式歌になったわけだが、金正恩氏がもはや金正日氏の遺名に頼ることなく、名実ともに北朝鮮の最高指導者としての地位を確立していることを象徴しているといえそうだ。