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初の著書を上梓“チケットの取れない”若手人気ピアニストの藤田真央さんが語る、音楽と書くこと、そして料理との共通点

ピアニストの藤田真央さん(撮影/小野祐次)

ピアニストの藤田真央さん(撮影/小野祐次)

 12月6日に初の著書『指先から旅をする』(文藝春秋刊)を上梓したピアニストの藤田真央さん(25才)。“若き天才”として世界中でコンサートをする合間を縫って執筆を続ける藤田さんに音楽と書くことの共通点を聞いた。

「書くことと演奏することって、かなり似ているところがあると思って。私は普段、何百年も前に作曲された楽曲の楽譜と対峙しながら、一小節ずつ『この和音はこういう意味を持っているから、こんな音色で。そうすると次の音はどうしようか』と考えています。それがひと段落すると、今度は全体の構成を見ながら『焦点をどこに置こうか』と考え始める。それは文章も同じで、『いまこの言葉を使ったから、次に同じニュアンスが入る時は別の言葉を選んで……』と考えながら、伝えたいことがより豊かに表現できるように構成する。すごく音楽に通ずるものがありますね」

 藤田さんは18才でクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールに優勝し、その2年後、20才で世界3大ピアノコンクールのひとつ、チャイコフスキー国際コンクールで第2位受賞。以降、世界のマエストロから熱烈なオファーを受けて数々の名門オーケストラとの共演を実現させ、日本では「いま一番チケットの取れないピアニスト」と言われる若き天才だ。

 同著には、世界中からラブコールを受けた藤田さんが20か国100都市を回り、熱狂の舞台に立ち続けた2年間がエッセイと語り下ろしによって記録されている。

「文章を書くのは移動中がほとんど。世界を回っているとフライトの時間が長いから、その間にパチパチとパソコンで書いています。面白いことに、エッセイの執筆を始めてから“一日の濃度”が変わりました。エッセイのためには日常の中で起きる出来事をどれだけ見逃さないようにするかが重要。だから一瞬、一瞬がいままで以上に尊いものとなりました。

 世界を旅していて印象的だと感じたのは、それぞれの国や地域でクラシック音楽の受け取られ方が大きく違うということ。日本だと、きちんとした服装で音楽ホールに聴きに行くようなコンサートがほとんどですが、たとえばイスラエルでは観客も演奏者もジーンズで参加する『ジーンズコンサート』なんてものもある。開演前は『みんな楽しんで音楽を聴きましょう』とビールが無償で配られるんです。

 また、同じアジアですが、中国のお客様からのリアクションは面白かったです。中国は西洋クラシック音楽が根付いてまだあまり時間が経っていないですが、ラン・ランという男性のピアニストを筆頭に、ユジャ・ワンなど華麗なスターピアニスト達がこの業界を盛り上げてきました。私も口笛やブラボーの声で目一杯讃えてもらいましたね。コンサートを主催する人たちもファミリー層にクラシックを取り入れてもらおうと働きかけています。ただ、日本のスマホアプリはほとんど使えないですし、中国への入国準備の際に原発の処理水の問題が起きて、ビザが下りるのに時間がかかってしまった。世界を旅することには、時折“政治”がついてまわることを実感しました」

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