「催涙スプレーをぶっかけられた時のわたし」

「催涙スプレーをぶっかけられた時のわたし」

「お母さんは、ここにきて『何か欲しいものない?』って。この服もお母さんが差し入れてくれたんです。お母さんのところにも刑事さんと弁護士さんが来て、取り調べを受けて『なんで助けてあげなかったんだ』って、怒られたって」

 ちょうどその時、後ろに控えていた刑務官から「あと30秒です」とのコールがかかった。
 
「とにかく、母親はひとりなんですよ。ひとりで可哀そうな人なんです。お父さんとは会話もないし、友達もいないような人で、私しかいないから。だから、お母さんを救ってあげたい」

 接見時間が終わると、渡辺被告は筆者と刑務官に深々とお辞儀をしてお礼をいい、部屋を出て行った。

 渡辺被告は被害男性について「何とも思っていない」と嘯いたが、かつてまめにアップしていたSNSで2000万円以上を受け取った翌日に〈『ごめんね』なんて、わたしの心殺してしまうようなこと一生涯わたし思わないように〉と「おぢ」に対し、逡巡する気持ちも綴っていたこともまた「事実」だ。

 15分という短い接見時間で彼女の現在の心を推し量ることは難しいが、それでも、記者の取材とわかっていながら、表に出たら刑期に影響しそうな内容を嬉々として話す姿や、ことあるごとに、後ろに控える刑務官に「ありがとうございます」と頭を下げる深さは、何か、人に好かれようとすることが習い性になっているようにも感じられ、渡辺被告の言葉をどこまでその通りに受け止めるべきか、複雑な気分になったことは確かだ。
 
 次回の公判は来年2月16日、愛知県名古屋地裁で開かれる。

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