「頂き女子」のカリスマだった(本人Twitterより)

「頂き女子」のカリスマだった(本人Twitterより)

 しかし全体で84席もある広い傍聴席で私が座っていたのは、後列から2番目の席であり、被告人席から目が合うような距離ではない。それでも「私はあなたを認識してます」というように、こちらの心を揺さぶり、気を持たせるようなことを言うのは、もはやクセとなっているのか。そして、“元気がなかった”理由については「裁判じゃ元気だしちゃダメじゃないですか~(笑い)」と、語尾を伸ばした「りりちゃん節」で、悪びれもせず言い切るのだ。
 
 では、いまの状況をどうとらえ、何を考えているのか。

「うーん……。何を考えているのか、といわれるとわからない。外に出たら何をしよっかなとかですかね。どうしよう? いきなり言われても、パッと出て来ない。

 逮捕されたことへの後悔ですか? 事件のことは、流れのままに受け止める。受け入れています。あっ、刑務所って資格とれるんですよね?何の資格とろうかな……」

 時折口ごもりながらも、笑顔とハイテンションぶりは変わらない。「わからない」と言うときは頭に手を当て、「流れのままに」に言及する際は「置いといて」というジェスチャーを使い、身振り手振りを交えながら楽しげに筆者に話しかける。

 8月に逮捕された2か月後、「詐欺でだまし取った金だと知りながら現金4000万円を受け取った」として、渡辺被告が指名していた歌舞伎町ホスト・狼谷歩(26才)が組織犯罪処罰法違反の罪で逮捕されたことも大きな話題となった。(※その後12月5日に覚せい剤取り締まり法で再逮捕)

 全国紙社会部記者によると「彼は渡辺被告のお金の出所について、いくらでも知らないフリをすることができたのに、言い訳もせず、素直に逮捕に応じた」といい、このことは歌舞伎町でも大きな話題となっていた。

 実際筆者は取材で知り合ったある20代のホス狂いが「これって、ホストが一緒に罪を被ってくれたってことですよね? 担当と“心中”できるなんて、こういったら何だけど、羨ましくて……」と呟く場面に出くわしたことがある。

 しかし渡辺被告は狼谷容疑者の逮捕は知らなかったようで、伝えると目を丸くして驚いていたものの、歌舞伎町内でまるで美談のように語られている、“彼が罪をすべて認めたこと”については「ホストとして行き詰ってたから逮捕されたんじゃないですか。私もこっちで罰を受けるし、人生考え直してるし、歩(あゆむ)さんも、そんな感じで!」とまるで他人事だった。

“担当”については一貫してドライな態度を貫いたものの話が「ホスト」や「歌舞伎町」に及ぶと、ここぞとばかりに自身の「ホス狂い人生」について堰を切ったように話し出す。

 曰く、「一番最初にホストクラブに行ったのは20才の時。その時指名した担当が、30万使えばナンバーワンになれるというので、ソープで働くようになった。最初は30万だったのが、そのうち50万、次はイベントがあるから……と、どんどん高額を使うようになっていった」のだという。

 自らがホストにハマっていく過程を「病み営」(病んでいるふりをして同情を惹く営業)や「店グル(店全体がグルとなって客を囲い込むこと)」などの夜の専門用語を交え「これはこういう意味で」と解説しながら話す様は、まるで「りりちゃん劇場」を見せられているかのような気分にさせられる。手をひらひらさせながら、体を傾け、私が口をはさむスキがないほどまくしたてる。途中で興奮のあまり、顔が真っ赤になる場面も何回もあった。

「私、いままで人の役にたったことがないですし、昼職も楽しくないとか、生きがいがない。流されるままでも、お金を稼いで“頑張って”、役に立っているというのが嬉しかった。自分の中で楽しいと思った。
 
 私の周りって、ホス狂いの子がすごく多くって。体売っても、何しても、お金を稼いで、担当に使うというのは素晴らしいことで、歌舞伎町はそれが褒められる世界なんです。そうやって、昼職やめて、風俗いって、詐欺にっていう流れですね。おじさんたちからお金をもらおうと思ったきっかけも風俗。ずっとナンバーワンだった当時の担当が、太いお客さんと切れちゃってナンバー2なったことがあってとにかくお金が必要だったとき、風俗のお客さんからお金をもらったことがあって。それで、おじさんたちからお金をもらおうと」
 
 渡辺被告は自身で「詐欺」と口にしたが、生命保険を解約してまでして彼女に全財産をつぎ込んだ「おぢ」についてはどう考えているのか。すると、それまでの饒舌が一気にやんで、きょとんとした様子で、こう話すのだ。

「何も思わない。なんか、何も思わないですね。後悔とかも現状は『ない』です。(被害者に対し)人間として接したという感覚ではないので。検事さんたちにも同じことを聞かれたんですけど、でも、まだ全然答えは出せない。でも、相手の方たちが、私に今後も何か求めることがあるなら、向き合おうと思います」

 被害者には「親との関係が悪く、縁を切りたいが、手切れ金として800万円を要求されている」と言い、現金を詐取した渡辺被告だが、現在勾留されている愛知県の留置所には、母親も面会に来ているという。

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