江川と西本「生涯成績比較」
もう大変どころじゃなかったよ
──1979年8月1日、西本さんが連続試合出場記録の続く衣笠祥雄さんにデッドボールを当てた広島戦は大変でしたか?
江川:そんなのあった?
西本:もう大変どころじゃなかったよ。張本(勲)さんがバットで相手選手を殴るわ、帰りのバスもファンに取り囲まれて。
江川:俺、たぶん上がりだったから惰性で観てたかも。投げる前だったら真剣に観てるから。
西本:次の日、江川さんが先発だったはずよ。
江川:真剣に観てないとダメなやつじゃん(笑)。
西本:2アウトランナーなしから3連続で当てたの。3人目が衣笠さんで左肩に当てちゃって。骨折って、そりゃ怒るよね。
江川:シュートがすっぽ抜けたんだろうね。
西本:宿舎に帰ったら、長嶋さんにどつかれた。
江川:あの時か。実は長嶋さんの隣の部屋が俺だったの。角(盈男)も一緒にいたでしょ?
西本:角と一緒に長嶋さんの部屋に呼ばれた。
江川:隣からなんか音がしてお説教してるのかなと思って寝てた。夢じゃなかったんだね(笑)。
西本:長嶋監督が「逃げるな、向かっていけ」って言うから向かっていったら3人も当てちゃったよ。その夜、衣笠さんに電話して「すみませんでした」。そしたら「勝てるのに勝てなくて損したな」って優しく言われたのを覚えている。7-1で勝ってたのに8-8の引き分けで終わったから。
【プロフィール】
江川卓(えがわ・すぐる)/1955年、福島県生まれ。作新学院にて数々の記録を達成した後、法政大学に進学しエースとして活躍。米・南加大野球留学を経て、1979年に読売ジャイアンツに入団。MVPなど多数の記録を残し、1987年に引退。現在は野球解説など多方面に活躍中でYouTubeチャンネル「江川卓のたかされ」が話題。
西本聖(にしもと・たかし)/1956年、愛媛県生まれ。1974年に松山商業からドラフト外で読売ジャイアンツに入団、沢村賞などを獲得。その後、中日、オリックスを経て再び巨人で引退。ドラフト外史上初の150勝を達成した。コーチとしても数々の球団で指導した。現在は野球解説者として活躍中。
※週刊ポスト2024年1月1・5日号