そんな由美の夢は「シニアのアイドル」になること。しかも「世界のシニアのアイドル」と、スケールが大きい。
「生きていると、悲しいこともつらいこともある。生きることは大変ですよね。それでも、命を燃やして生きることは素晴らしい。だからこそ、大変なことを楽しさに変えていける力を養いたいんです。そんな強さを持った女性として、同世代のシニアの皆さんを元気づけられる存在でありたい。健康であれば、それも叶うと信じています。
幸い、私はブリージング(呼吸法)を習得したことで、とても健康です。世界中のシニアの皆さんにブリージングを伝授して、人生に希望を持ってチャレンジできる体づくりのお手伝いをしたいと思っています。ブリージングを教えながら海外を巡って、その土地の風土を楽しみ、おいしいものを食べられたら幸せ。私のジャズも聴いてもらったりしてね。
健康づくりのお手伝いをすることは、愛を広めることでもあると思うんです。今の世の中は愛が欠けているというのかな。人として大切なものが薄れてきている気がして。あたたかく、やさしい心を共に育めるような、そんな交流ができるアイドルになれたら理想です」
70歳から歌や外国語のレッスンに再び力を入れているのも、海外での活動を見据えての準備なのだと明かす。
「今、年を重ねることが楽しいんです! 今までやってきたことを奥深く追求することで、自信がわいてくる。歌も語学も自分自身もすべて磨いて、“これが私だ。由美だ!”と胸を張って世界へ出ていきたい。人目を気にして自分を作ってばかりいると、疲れちゃうもの。長く人生を歩んできた今だからこそ、“私はこうなんです!”と堂々としていいと思う。歌でも呼吸法でも、自分らしさを魅力にして、どんな時もありのままでいられたらと思います。若い頃より肌が多少衰えたとしても、動じない。シワだって、人生経験を積んだ大人の魅力に変えていけばいいんだものね」
“永遠の妖精”と称されるなど、ふんわりしたイメージもあるが、実際の由美は考え方がはっきりしていて、芯の強さを感じさせる。「『水戸黄門』のお風呂のシーンを見ると、もっと女らしいと思ってくださるみたいなんだけど、いえいえ(笑)」とはきはき語り、「これがありのままの私なの」とチャーミングな笑顔を見せた。
【プロフィール】
由美かおる(ゆみ・かおる)/1950年生まれ、京都府出身。『11PM』で脚光を浴び、『夜のバラを消せ』(1966年)で銀幕デビュー。『同棲時代-今日子と次郎-』(1973年)のポスターも話題に。時代劇『水戸黄門』(TBS系)には1986年から25年間レギュラー出演し、妖艶な入浴シーンは204回披露。自身が開発した呼吸術の指導を全国で行ない、近著に『由美かおる ブリージング・レッスン: 人生100年時代を生き抜くための神呼吸術』(白秋社)
取材・文/渡部美也