芸能

倍賞千恵子、『男はつらいよ』を語る 「さくらちゃん」と声をかけられることを重荷に感じ、渥美清さんに怒られた過去

年末年始の風物詩でもあった『男はつらいよ』(時事通信フォト)

年末年始の風物詩でもあった『男はつらいよ』(時事通信フォト)

 全50作を数える『男はつらいよ』シリーズは、まさに国民的映画であり、年末年始の風物詩でもあった。1969年公開の第1作『男はつらいよ』から、主人公である「フーテンの寅」こと車寅次郎の妹、さくらを演じた倍賞千恵子に、“私にとっての「寅さん」”を語ってもらった。

 * * *
 全50作の『男はつらいよ』は、私が出演した映画177本のうちの約3分の1ですから特別な作品です。撮影中はそんなこと意識していないのですが、何かの拍子に満男役の吉岡秀隆さんに「大きくなったなあ」って思うことがあって(笑)、「ああ、ひとつの作品に長く携わってきたんだな」と実感するようになりました。

 今も一番印象に残っているのは1作目です。台本を読んだ時、私が暮らしていた町と柴又がとてもよく似ていて、「どんな作品になるんだろう」とワクワクしたことを憶えています。当時はスタッフの声がそれはもう激しく飛び交うような、活気に満ち溢れた撮影現場でした。でも、シリーズ終盤になると役者もスタッフもすっかり大人しくなって、静かになっていきました(笑)。

 さくらは、私にとって尊敬する女性です。主婦なので大根やお豆腐の値段をわかっているし、おいちゃんやおばちゃんと“普通”の暮らしをしている。それに比べて当時の私は、移動中の車でご飯を食べて仮眠を取ったりの毎日で、一般社会からかけ離れた生活でした。

 正直に言うと、町で知らない人から「さくらちゃん」と声をかけられることを重荷に感じた時期がありました。渥美さんに話したら、「生意気言うんじゃない!」と怒られて……「役者が役名で呼ばれるのは名誉なことなんだぞ」と。本当にそうだなと反省しました。

『男はつらいよ』は、さくらの人生を通してさまざまなことを学んだ、私にとっての“人生の学校”。大切な思い出がたくさん詰まっています。

【プロフィール】
倍賞千恵子(ばいしょう・ちえこ)/1941年生まれ、東京都出身。1961年映画デビュー。1963年『下町の太陽』以降、『幸福の黄色いハンカチ』(1977年)、『遙かなる山の呼び声』(1980年)など、山田洋次監督作品に欠かせない女優に。近年はコンサートや講演活動などで幅広く活動。

※週刊ポスト2024年1月1・5日号

関連記事

トピックス

10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン
モデルで女優のKoki,
《9頭身のラインがクッキリ》Koki,が撮影打ち上げの夜にタイトジーンズで“名残惜しげなハグ”…2027年公開の映画ではラウールと共演
NEWSポストセブン
前回は歓喜の中心にいた3人だが…
《2026年WBCで連覇を目指す侍ジャパン》山本由伸も佐々木朗希も大谷翔平も投げられない? 激闘を制したドジャースの日本人トリオに立ちはだかるいくつもの壁
週刊ポスト
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段どおりの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人》大分県警が八田與一容疑者を「海底ゴミ引き揚げ」 で“徹底捜査”か、漁港関係者が話す”手がかり発見の可能性”「過去に骨が見つかったのは1回」
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン