バルセロナの森下のように
金:代表争いは、男女ともに上位2人が内定するMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)が昨年10月にありましたが、ひどい雨でした。
谷川:男子は悪天候で真骨頂を発揮する川内優輝選手(36)が序盤から飛ばしましたね。
金:30キロまでは“川内劇場”でした。みんな2位以内を狙うから守りのレースになる。川内選手は、若手を鼓舞するように引っ張った。
谷川:35キロくらいから小山直城選手(27)が仕掛けて、大迫傑選手(32)や赤崎暁選手(25)と競り合う形に。結果、1位の小山選手、2位の赤崎選手が内定しました。
金:タイムは出なかったけど世代交代を印象づけるレースでした。小山選手も赤崎選手も、2021年の東京五輪の時は初マラソンすら走っていなかった。特に赤崎選手はダークホース的な存在で、マラソンはMGCが3レース目。こういう勢いのある人が出てくると面白い。1992年バルセロナ五輪の森下広一くんは、マラソン3回目で銀メダルでしたから。
谷川:東農大出身の小山選手と拓大出身の赤崎選手は、箱根駅伝には出ているけど、活躍したとは言えません。箱根の活躍で燃え尽きる選手は多い。逆に活躍していない選手はモチベーションが保てて、伸びしろが大きいのかもしれない。
金:彼らに続く3枠目ですが、残り2レースで設定記録を上回る選手が出てくるかで決まります。
谷川:男子の設定記録は2時間5分50秒。対象レースは大阪マラソン(2月25日)と東京マラソン(3月3日)ですね。
金:大阪よりも、コースが平坦で好記録を狙いやすい東京を選ぶ選手がほとんどになるでしょう。
谷川:ただ、よっぽど調子のいい選手じゃないと、2時間5分50秒を切るのは難しいですよね。
金:世界と戦える水準としての設定ですから、日本記録保持者の鈴木健吾選手(28)含め、一度MGCにピークを持っていこうとした選手は厳しい。誰も設定記録をクリアできず、結局MGC3位の大迫選手がそのまま3枠目になるんじゃないかな。
谷川:その可能性は高いと思います。パリ五輪本番は誰か一人が飛び出すことはなく、様子を見ながらの集団走になるはず。そういう展開でトップ選手は揺さぶりをかけるけど、ベテランの大迫選手は揺さぶりに反応しない。
金:淡々と自分のペースで走れるのが彼の強さ。
谷川:6位くらいまでに入れるかな?
金:メダルは正直、ちょっと厳しい。あとの2人は暑さに強いのかも未知数。面白いけど、そのぶん読めないですね。