ガリガリに痩せ細ったヒグマも
12月2日、私の友人がヒグマを仕留めた。
解体中の写真を見せてもらって驚いた。全くと言っていいほど脂肪がついていないのだ。ガリガリに痩せている。消化器の中にも、何も入っていなかったそうだ。
脂肪を蓄えられない状態で冬眠に入れば、無事に春を迎えることはできないだろう。自分の体が冬眠に耐えられないことは、彼ら自身が最もよく分かっているはずだ。そうしたヒグマは眠ることをしない。腹を減らしたまま、食べものを求め、冬山を徘徊する。
当然のことながら、果実などの植物性の食べものはあてにできない。山でありつけるとしたら、エゾシカなどの動物だ。人里近くにまで徘徊してきたヒグマの中には、人間が出す生ゴミの匂いに惹かれるものもいるかもしれない。
ヒグマも人間も受難は続くのではないだろうか。私は不安を抱えたまま、この冬も猟師として山を歩く。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
黒田未来雄(くろだ・みきお)/1972年、東京生まれ。東京外国語大学卒。1994年、三菱商事に入社。1999年、NHKに転職。ディレクターとして「ダーウィンが来た!」などの自然番組を制作。北米先住民の世界観に魅了され、現地に通う中で狩猟体験を重ねる。2016年、北海道への転勤をきっかけに自らも狩猟を始める。2023年に早期退職。狩猟体験、講演会や授業、執筆などを通じ、狩猟採集生活の魅力を伝えている。著書に、『獲る 食べる 生きる 狩猟と先住民から学ぶ“いのち”の巡り』(小学館)。
黒田未来雄著『獲る 食べる 生きる: 狩猟と先住民から学ぶ”いのち”の巡り』
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