フェイクドキュメンタリーの魅力は“説得力”
小林は『CITY LIVES』の前に「JAC AWARD 2022」を受賞したCM「幸せの神」や、「Spikes Asia 2023」ブロンズを受賞した「Vocument #1『今、映画監督オダギリジョーが立つ場所。』」と立て続けにフェイクドキュメンタリー作品を演出し、フェイクドキュメンタリーにおけるドキュメンタリー性を研鑽していった。
小林:ドキュメンタリーっぽく撮っていますけど、本当のドキュメンタリーってあんなに映像は荒っぽくないんですよ。あんなに手ブレしないし、フレームもゆるくない。けど、少し荒いくらいのほうが映像から感じるリアリティとしてはちょうどいいのかなと。特にこういう内容だと。『CITY LIVES』のカメラは、「Vocument」や「幸せの神」も担当してくれた山田晃稔さんというカメラマンです。その都度ドキュメントっぽく見せるための方法論や匙加減をずっと試行錯誤していました。場面によっては役者の動きをカメラマンに伝えず、カメラワークはアドリブでいくとか、色々毎回手探りで。
針谷: VFXを使うカットにおいてもフェイクドキュメンタリーって画が作りやすいんですよ。既に存在しているドキュメンタリー作品が質感の見本になるので。明確な目標があると作る側としては迷わずに済むんです。
小林:過去の記録映像の場面についても、それぞれの時代のこういう感じの映像見たことあるっていう視聴者の感覚にこっそりタダ乗りして、認識の中にすべり込ませることができる。
立て続けに3作のフェイクドキュメンタリー作品を作ったことからも自明なように、小林は見る側としてもフェイクドキュメンタリーが大好きだという。
小林:僕は“説得力好き”なんです。怪獣が歩いたらここの電話ボックス割れるよね、みたいな細かい部分が快楽の塊(笑)。あと、ウソ漫談をする街裏ぴんくさんが大好きなのですが、ウソを本当のこととして堂々と喋っている時の“真顔ボケ”の面白みが好きですね。『CITY LIVES』も1話はウソを突き通す感じで行って、2話以降、実際こうだったらこうだよねみたいなリアリティで説得力を加える方向にスライドしていくみたいな考え方でした。
一方で針谷はフェイクドキュメンタリー自体が特別好きというわけではない。しかし本職ではテレビ番組の編集をしているため、それが大いに役立った。
小林:テロップとかは、針谷さんにめちゃくちゃ監修してもらいましたね。Webムービーのノリでつけたら、テレビはこんなに小さくないんだとか。本職の監修が入ったドキュメンタリー(笑)。
針谷:普段の仕事に寄せていけばいいから安心はしましたね。