「地震は初めてだった。でも、ここから出ようとは思わないよ」
1月3日に丸岡さんの家に戻ったというアルチャさん。断水の影響で水もお湯も出なかったためシャワーも浴びられていないが、カセットコンロでお湯を沸かし、バケツに入れて水と混ぜ、頭から浴びたという。
「あれは最高に気持ちよかった」と嬉しそうに話し、「お湯がもったいないから下にバケツを置いて、こうやって何度も浴び直しました」と、身振り手振りで洗い方をレクチャーしてくれた。
余震も少し落ち着き始めた頃、アルチャさんは普段住んでいるバックパッカー用のゲストハウスへ様子を見に行ったという。
「家のなかはやっぱりぐちゃぐちゃでした。屋根も落ちて、家が斜めになっていて……もう住めないかもしれません。私を心配してくれた金沢の友達が『うちにおいで』とコンタクトを取ってくれた。私は『丸岡先生の家にいるから大丈夫』と言ったけど、心配してくれて本当に嬉しかった」
最後には、日本へ来た経緯を話していた時の目の輝きを取り戻して、アルチャさんは力強く話した。
「地震は初めて経験しました。怖かったし、ショックだし、パニックだった。だけど、ここから出たいと思わないよ。いつかここで、永住権を取ることが夢なんです。私にとって穴水は本当に、本当に大切な場所。空気はクリーン。野菜も美味しい。人も、自然も素晴らしい。
本当にタフな時間はこれからだと思います。今は気持ちがハイになっているけど、元の生活を取り戻すために必要な時間はとても長い。それでも、被災した場所が穴水で良かったと思っています。ここには“大丈夫”と言ってくれる人がたくさんいるから」