甲府地検に入る、逮捕された少年を乗せた車(2021年撮影、時事通信フォト)

甲府地検に入る、逮捕された少年を乗せた車(2021年撮影、時事通信フォト)

被告が耳を塞いだ「母親の調書」

 昨年11月13日に行われた裁判員裁判では、弁護側証拠として被告人の母親の調書が読み上げられた。そこで明らかになったのは、被告の生い立ちである。遠藤被告が小学2年生のとき、給湯器の窃盗で実父が逮捕された。執行猶予判決を受けたものの、事件が近所に知れ渡り、遠藤被告は肩身の狭い思いをしたという。友人ともトラブルになり、小学校を休みがちになったと明かされた。

 友人との間に起きたトラブルについて、母親は調書でこのように述べていた。

「友達の保護者が、被告と『遊ぶな』と言い、友達と遊べなくなった。親友だった子供の親が『被告がニンテンドーDSのソフトを盗んだ。ソフトのケースが敷地に落ちていた』と怒鳴り込んできたことがあった。私は被告に何度も問いただしたが、彼は『絶対に盗ってない』と言い、家中ひっくり返すほど探したがソフトは出てこなかった。あのときのことは、被告と友達を遊ばせないために被告に濡れ衣を着せようとした親の画策ではないかと今でも思う」(母親の調書)

 のちに別の学校に越境通学するようになってから、幼い被告の精神は一時持ち直した。一方で、両親は離婚。まもなく母親はパート先で出会った男性と再婚し、養子縁組によって再婚相手の男性が被告の養父となった。しかし新たな家庭は、被告にとっては決して居心地の良いものではなかったらしい。

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