ミッキーマウスが女性の背後に迫り、唐突に首を絞める──。あのミッキーがそんな“殺人鬼”として描かれるホラー映画『ミッキーズ・マウス・トラップ』が3月に全米で公開予定となり、衝撃を与えている。
世界的な人気キャラクターに何が起こってしまったのか。知的財産分野に詳しい弁護士の福井健策氏が解説する。
「ミッキーが初登場した1928年公開のモノクロ映画『蒸気船ウィリー』の著作権が切れたため、第三者が自由に利用できるようになったのです。
米国の法律では、著作権の保護期間は95年と定められている。公開から95年が過ぎると、パブリックドメイン(PD)といって公共財産になります。『蒸気船ウィリー』は2023年末で著作権が切れて今年からPDとなったので、ディズニーの許可なく映像をそのまま使うこと、登場キャラのぬいぐるみやTシャツなどのグッズ製作や販売、そして二次創作も合法になりました」
冒頭のホラー映画もミッキーの二次創作した作品、というわけだ。他にもミッキーを利用した別のホラー映画や3Dゲームなども相次いで発表されている。
ただし、無制限にミッキーを利用できるようになったわけではない。福井氏は「著作権が切れたのはあくまで『蒸気船ウィリー』の初期ミッキーのみで、以降に公開されたミッキーは対象ではない」と説明する。
「昨年、一足早く『くまのプーさん』の著作権が切れた際もホラー映画が公開されましたが、真っ先に“待ってました”とばかりに出てくる作品はけっこう駄作が多い。パブリックドメインは、新たな創作の可能性を保護する制度でもあるので、何年か経って優れたミッキーの二次創作が出てくることを期待しています」(福井氏)
二次創作にクオリティーが伴わなければ、新たな“夢の国”はつくれないということか。
※週刊ポスト2024年2月2日号