中国・貴州省遵義市の運動施設。利用者はほぼいない
「隠れ債務」は約1400兆円
米中対立の先鋭化により、主要国向けの輸出の先行きは暗い。アメリカなど民主主義の国々は、「脱・中国のサプライ・チェーン作り」に躍起になっているからだ。また、政府がどれだけ補助金を出しても、少子高齢化は止まらず、労働人口の減少は続く。
これに、追い打ちをかけるのが、株価下落に象徴される、マネーの海外への流出だ。中国経済の先行きを不安視したマネーが海外に逃げ始めている。地方政府の「隠れ債務」の大きさはIMFによると66兆元(約1400兆円)で、政府がこれをどう処理できるのかが、経済の先行き不安を増大させている。
さらに、習近平の国有企業優先の経済政策への不信も先行き不安に輪をかける。経営破綻状態のゾンビ企業を増やすことになり、新しいイノベーションを生み出す IT企業などの可能性を大きく縛ることになるからだ。深圳市場の中でも、新興企業向け市場の「創業板」指数が29日だけで3.48%下げ、2019年以来の安値をつけたのは、象徴的だといえよう。
【プロフィール】
松富かおり(まつとみ・かおり)/1959年、鹿児島県生まれ。東京大学卒。TBSで「筑紫哲也ニュース23」などニュースキャスター『有村かおり』として活躍。1999年、外交官の夫と共にニュージーランド、トルコ、フランスに赴任。以後イスラエル大使夫人・ポーランド大使夫人として外交の現場に携わりつつジャーナリスト活動を再開。 著書に『明日は戦場にいるかもしれない』(窓社)『エルドアンのトルコ』(中央公論新社)など。