宝槻泰伸さん(写真中央)が主宰する探究学舎では、座学ではなく、子どもたちが積極的に手を挙げたり実験したりと、アクティブな授業が行われている

宝槻泰伸さん(写真中央)が主宰する探究学舎では、座学ではなく、子どもたちが積極的に手を挙げたり実験したりと、アクティブな授業が行われている

子どもを受容すれば好奇心は自然と広がる

 Sさんの次男が探究学舎に通い始めると、親子でどっぷりはまった。

「親もリアルの授業を見学できるのですが、学び直しと言いますか、“勉強は本来、楽しむものだ”ということが実感できました」

 驚いたのは、宝槻さんら講師陣の受容の仕方だった。

 授業中に、子どもたちが脱線したことを口にしても、まったく外れたことを言っても、講師らは、それを「違う」と否定するのではなく、「その考え、面白いじゃん」「発見があったね!」と応えてくれる。

「学校ではどうしてもトップダウン式に、ああしろ、こうしろ、と押しつけてきますが、探究学舎は子どもたちからボトムアップできる。子どもにとっては、“何でも話せる時間”だと思います。言いたいことを言って、やりたいことをやっているうちに、好奇心の枠が広がっていくのが、親から見てもわかりました」

 探究学舎は、代表の宝槻さんが父親から受けたユニークな教育からコアとなる部分を取り出し、教育メソッドとして確立したもの。自身の体験を著書『遊んで見つける学びの革命』にまとめたところ、アマゾン計10部門で1位を獲得するなど話題を呼んだ。そこには、父親から受けた“教育の柱”がこう記されている。

1.子どもには何よりも、学ぶことを楽しんでもらいたい。
2.無理矢理やらせるのではなく、自ら取り組ませたい。
3.学ぶことで世界の広さを知り、自分なりの夢を見つけてほしい。

 子どもが自発性と好奇心を身につけるために、宝槻さんの父親が用意したのが「体験」だった。一緒に本や漫画を読む、キャンプに行く、夜空を見上げる──こうした「感動と体験の共有」を通して、一緒に世界を学んでいく。

「世界に驚き、事実に触れ、探究する方法を知る。こうした学びの体験こそ、まさに現在の探究学舎の中心です」(宝槻さん)

 こうした探究学舎スタイルの体験型学習は、少しずつ公教育にも取り入られ始めている。

 2022年には、探究学舎と三鷹市教育委員会が協同し、プロジェクト「探究カンファレンス」を立ち上げた。これは、探究学舎が授業のノウハウを小中学校の教員に伝授し、それを駆使してオリジナルの授業を開発するという試みだ。

 さらに同市と連携協定を結び、探究学舎による教員への研修、参観も続けて行われている。

 2023年には、探究学舎で子どもを学ばせている前出のMさんら世田谷区(東京)の保護者が立ち上がり、教育委員会に提案して、区立小の教員100人への探究学舎による研修も実現した。

 学びとは、決して一方通行であっても、強いるものであってもいけない。遊びの中で夢中になれるものを見つけた子どもは強いのだ。

戦国英雄に関する授業がきっかけで、日本史はもちろん、城や合戦場を再現したり、地形や鎧兜、三国志まで、Mさんの長男の興味は連鎖的にぐんぐん広がっていった

戦国英雄に関する授業がきっかけで、日本史はもちろん、城や合戦場を再現したり、地形や鎧兜、三国志まで、Mさんの長男の興味は連鎖的にぐんぐん広がっていった

(了。前編を読む

取材・文/角山祥道 撮影/五十嵐美弥(女性セブン)

※女性セブン2024年2月22日号

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