『鬼滅の刃』は映画も大ヒットしている(写真/時事通信フォト)
「ジブリ」に匹敵する国民的アニメに
特筆すべきは、内容をわかった上で楽しむ後者のゴールデン・プライム特番。全国ネットのゴールデン・プライムだからこそ「みんなで一斉に楽しめる、一緒に感動できるライブイベント」としてのお祭り感が幅広い年代からの人気を保ち、今なお新規のファンを獲得するきっかけになっています。
その「みんなで一斉に楽しめる、一緒に感動できるライブイベント」は、日本テレビで放送され続けているジブリ映画と同等レベルと言っていいのではないでしょうか。『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』など、20年以上前に公開された映画を再放送し続けているわけですから、ジブリが国民的アニメであることに異論をはさむ余地はないように見えます。
しかし、『鬼滅の刃』は「新シリーズ放送」という鮮度がある上に、それがスタートする前から「ワールドツアー上映→ゴールデン・プライム特番(特別編集版)→新シリーズ」という必勝パターンで楽しませることも可能。視聴者はもちろん、制作サイドの集英社・アニプレックス・ufotable、放送局のフジテレビ、3者すべてにメリットがあるウィン・ウィン・ウィンの関係が確立されています。
アニメに限らずドラマ、バラエティ、ドキュメンタリーなどを含めてもこれほど強いコンテンツは見当たらないだけに、『鬼滅の刃』は原作漫画の最後まで描かれたあとも、ジブリ映画のように定期的な再放送が期待できるでしょう。
いずれにしてもアニメ『鬼滅の刃』の足跡は新たな国民的アニメとしてのあり方を見せていることは間違いなく、次のヒット作もその必勝パターンを踏まえたものになっていくのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。