地元住民や従業員などが参加する「六本木ヒルズ盆踊り」。2004年から18回開かれている(時事通信フォト)

地元住民や従業員などが参加する「六本木ヒルズ盆踊り」。2004年から18回開かれている(時事通信フォト)

「こうしたトラブルは大小、様々なところで起きていますが、基本的に行政が介入することはまずなく、住民同士で解決してくださいというスタンスです。しかし、どうしても納得できない、自分達の権利が守られないと苦情を入れられる方は一定数いらっしゃる。市内でも、花火が見えるからと買った新興住宅地に引っ越したところ、同じく新たな住人が”花火大会がうるさい”と言い出し、結局花火が中止になった、という事例も聞きます。苦情の件数がそれほど多くなくても、例えば花火大会や盆踊りの主催者の方は大きなトラブルに発展する前に自粛しよう、と動かれるのです」(森永さん)

「郷に入れば郷に従え」ということわざは古くさいもの、今にそぐわないものとして語られるようになり、かつてより「個」が大切にされるようになったと言われる現代。個を優先させた結果なのか、それとも各人が好き勝手を言って周囲が疲弊しているだけなのか、はっきりとした状況は把握できない。だが、これらのイベントや行事は、その地域で暮らす人たちの様々な世代が交流し、自然と地域の沿革などに触れられる貴重な機会という側面もある。そんなものは無くても生きていけると思うかもしれないが、いま治安が安定した暮らしやすい社会を成り立たせてきたのは、そういった積み重ねもあったからだろう。それらを無視して、個人的な不快を理由とした苦情の前に沈黙し、「行事」を縮小させ続けてもよいのだろうか。侘しさを感じるのは、筆者だけではないだろう。

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